対魔忍RPG 「ジューンブライド・アゲイン」 制作雑感

突然だが、少し前からブログのタイトルを変更した。

はてなダイアリー」から 「はてなブログ」に移行して、「エロゲシナリオライターそのだまさきのエロゲとエロゲ以外」というやたら長いタイトルに、さらに(続)を付けていたのだが、それもいい加減いいだろうということで変えてみた。

「まんたん」は「子宮がザーメンでまんたんになっちゃう!」とかではなく、子供の頃の渾名で、いくつかそのペンネームで書いたこともある。私にとっては馴染みのあるものだ。

初心を思い出して頑張ろうということで、ひとつよろしく。

 

さて、イベントの実施からずいぶんと遅れてしまったが『ジューンブライド・アゲイン』の四方山話を始めるとしよう。

これは昨年の6月に実施された『ジューンブライド狂想曲』の「また来年」を受けて作ったものだ。

その間にあった『早く来い来いお正月』を入れると、性悪女神のジュノが出てくる三つ目のイベントとなる。

映画でも三部作というのはキリがいいので、ジュノシリーズに一応の区切りをつけるつもりで書いた。

といっても、最初に「また来年」とやったのは話にオチをつけるためで、その時点では「運が良ければやれるかな」くらいのつもりだった。
翌年の6月にウェディングドレスキャラが実装されなければ意味がないし、仮にされたとして私がイベントを担当するとは限らない。

 

それでも、自分でやれたらいいなということで、そんなイベントをやるのかも、どんなキャラが出るかも分からないうちから勝手にネタを考えてはいた。
そこで思いついたのが、今まで迷惑をかけられっぱなしだったジュノを助けに行く話だ。神に恩を売ってハッピーエンド。いいじゃないか。

それには新しい敵がいる。今までジュノもバステトも倒せなかったので、今度はちゃんと倒せるようなやつがいい。

助けに行くのが神なので、敵は科学でマッドサイエンティストにでもするかと考えていたら本当に科学ボスで発注がきた。

「ユーレカ!」だ。

ジュノが怪しい科学に捕まってしまう。ふうまたちに助けを求めるが、そのせいでまたしても大変な目にあう――とストーリーの骨子は一発で決まった。

 

マッドサイエンティストというと、やはりこの人を思い出さずにはいられない。
バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクター・エメット・ブラウン。通称ドクだ。
今回のボスのドクター・サイクロプスの元ネタはもちろんこのドクだ。

 

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だからこのパート1の若いドクのように、ドクター・サイクロプスも頭に変てこな帽子を被っているし、 オリジナルは「そいつはヘビー」ときたら「重力は関係ない」ので、こっちは重力を操る。ついでにこの年まで女性に縁がない。
こっちのドクがここまで拗らせてしまったのは、きっとマーティみたいな相棒がいなかったからだろう。


ドクター・サイクロプスという名前は神話に関係がありそうで、アメコミにいそうなキャラということで考えた。

ただ後で知ったのだが、そのものずばり「ドクター・サイクロプス」というアメリカ映画があったそうだ。

なんと昭和15年の作品だ。やたら古いものをもってくる私もさすがに知らない。

 

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日本では公開されておらず、当時の日米関係を反映してか、このパッケージ絵を見れば分かるように、マッドサイエンティストのドクター・サイクロプス東条英機をモデルにしているらしい。

せっかくなので取り寄せて見てみたが、確かに生物を小さくする怪しい実験をしているものの、別にそれで悪事を企んでいるわけではなく、主人公たちの方がドクターの研究を普通に盗もうとするろくでなしだった。

しかも、それを見つかって小さくされた仕返しに、ドクターが寝ている間にメガネを壊し、その予備まで隠すという、近視の人に絶対やってはいけない卑劣な攻撃をしかけてきて、ちょっとドクターがかわいそうになってしまった。

ちなみに、ドクターを演じていたアルバート・デッカーは「エデンの東」や「ワイルドバンチ」に出演した名優であるだけでなく、アメリカ民主党の下院議員でもあり、赤狩りを公然と批判したという気骨のある人物だが、気骨がありすぎたのか、自宅のシャワー室で手錠、目隠し、猿ぐつわを付け、口紅で卑猥な言葉を身体に書いて、セルフSMの窒息プレイ中に死亡したらしい。

イベントには全く関係ないのだが、それをきっかけにえらいことを知ってしまったということで、ここにも書いておく。

 

話を戻して、用意されていたウェディングドレスのキャラは、お色直ししてまた登場のアンジェ、満を持してのゆきかぜ、そして災禍と翡翠だった。
続き物なのでアンジェはもちろん出すとして、残りの3人にも全員出番を与えてあげたかったのだが、さすがに手に負えなくなりそうなので、目玉SRキャラのゆきかぜだけにした。

 

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そして、ふうま君と同じように、ゆきかぜもいきなりロクでもないトラブルに見舞われることに決めた。
すでに新しいゆきかぜの絵は色付きでできていて、ウェディングドレス姿のゆきかぜはそりゃもう可愛かった。
このゆきかぜを見たら誰だってプロポーズしたくなるだろう? 誰だってそーする。俺もそーする。
ということで、誰かれ構わずプロポーズされまくることになった。

 

だから、ふうま君はその反対、女の子全てに殺されそうになる。
最近、自覚なくモテまくっていることだし、そのペナルティとして、ついでに結婚は人生の墓場とも言うのでちょうどいい。

そんなことになった理由は、ジュノの神様パワーが重力のせいで間違って届いたからということにしているが、あの女神が人の好き嫌いを操る話など今まで一度もやってないので相当に無理やりだ。
まあ、神様のやることだからと、このジュノシリーズは基本的にどれもこれも強引な展開にしている。

 

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物語はジュノがドクター・サイクロプスに捕まっているところから始まる。
神を捕まえるほどの力を持つドクターご自慢の科学魔法陣の名はギャラルホルンだ。
最近は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に出てくる組織の名で知られているが、元々は北欧神話で神々の黄昏ラグナロクの到来を告げる角笛のことを指す。
そりゃジュノも縁起が悪いと嫌がるだろう。その割に神殺しの古代龍のベリリクとは仲がいいのが謎だ。
ジュノは人妻、いや神妻なので「ジュピターのやつ浮気ばっかりして超ムカつくからもう殺しちゃってよ」とか愚痴ってるのかもしれない。

 

そんなジュノが適当な感じに神様パワーを放出して、視点はゆきかぜに変わる。
今まで一度も書いたことがなかったので、ゲーム実況をやっている場面からだ。

「次回もあなたのハートにバッキューン」という決め台詞は書いていて妙に恥ずかしくなったが*1、せっかくなので言わせた。ボイスがないのが残念だ。

そしてウェディングドレスが出現し、ゆきかぜがフォームチェンジする。

自分の姿に見惚れてしまうゆきかぜや、それを眩しそうに見ているクリアやカラスが女の子していて可愛い。
「自分史上で一番綺麗な自分」という言い回しは『それが声優!』で、主人公の双葉がジャケット撮影のためにドレスアップした時のセリフからもらっている。
原作の声優、浅野真澄さんの実体験から出た言葉だろうか? 私からはなかなか出てこない言い回しで気に入っている。

 

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そうやって喜んでいたのもつかの間、ウェディングドレスが脱げなくなり、そのままの格好で学校に行って、男どもからプロポーズ攻撃を受けることになる。
最初にプロポーズする大役は鹿之助にした。
こういうのはどう考えても絶対にしそうにない人物でないと意味がない。
鹿之助ならぴったりだ。せっかくなので、そのまま戦闘場面にも出てもらった。

 

一方、ふうまを殺そうとする女子を誰にするかは少し迷った。
こちらもネームドキャラを使って戦闘場面に出したいところだ。
ただ、ふうま君への好意が一定以上だとなんだが冗談にならない気がするので、蛇子とか、きらら先輩はやめておく。
学校なのでそもそも出ないが、若さくらや紅もダメだろう。
行き遅れが懸念されている先生トリオもなし。強すぎて本当に殺してしまう。
紫水という手もあったが、設定上ちょっと難しいところがあるので避けておく。

かといって、ふうま君とあまり接点がない相手にやらせても、普段との差異を出せないので面白くない。

 

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そんなわけで、篠原まりと七瀬舞の仲良しコンビに出てもらった。
まりは淡い恋愛感情くらいだし、舞はそれを応援したい立場だ。
それでいて二人とも『期末試験とうさぎの対魔忍』でチームを組んでいるので、そのほどほどの距離感がぴったりだ。
ちょうどいいので、そのチームでやった任務の報告書の書き直しをするために、まりが舞と二人でやってきたということにした。
まりの変な報告書については、「ドジでおっちょこちょい」という設定を思いきり膨らませて書いてみた。

このイベントの少し前にエイプリルフールの新聞ネタがあったが、仮にリリムとミナサキが邪魔しなくても、おかしな新聞が出来上がっていたはずである。

 

そして豹変した二人とのバトルを挟んで、ふうま君とゆきがぜが合流した途端、ジュノとドクターのいる迷宮まで飛ばされてしまう。
話を五車町から始めた以上、どうにかして二人を現地まで行かせないとまずいが、ジュノの仕業だと分かって、居場所が判明して、二人でそこを目指すとかまどろっこしいので、もういきなりワープさせた。
正月のときもジュノがウェディングドレス3人をどっかから召喚しているので、それと同じ神様パワーによる仕業だ。

 

ダンジョンについてすぐ、ふうま君とゆきがぜが言い争いを始める。最近あまりやっていなかったので、なんだか久しぶりだ。
とはいえ、すでに痴話喧嘩じみているし、すぐ後で手を繋ぐの繋がないのとイチャイチャしている。おまえらいい加減にしろ。
迷宮の主のドクター・サイクロプスが怒るのも当然だし、ウェディングドレスのゆきかぜを見た蛇子が「ふうまちゃんに見せるの?」とか聞きたくなるのも無理はない。
蛇子はただでさえ幼馴染で負けルートに入りやすいのに、最近は一歩引いて待つ女が似合い始めているので、もうちょっと頑張って欲しいところだ。

 

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二人の侵入はジュノが何も考えずに喋ったことで、あっさりドクター・サイクロプスにバレてしまい、さっそく討伐隊が出される。
ここで鬼火だのガーゴイルだのといった使い回しの雑魚モンスター以外に、また誰かネームドキャラを出したくなった。
今回のイベントに合う適当なキャラはいないかと考えて、ちょうど正月に出すのやめたウェディングドレス娘がいるのを思い出した。
そう、ミナサキだ。あいつなら脈絡なく敵として出てきても問題ない。バトルの後であっさり味方についても問題ない。なんと便利なキャラだろうか。
ついでに、面倒なジュノとドクター・サイクロプスの説明もミナサキにやってもらった。正月に無理やり出さないで正解だった。

 

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ミナサキを加えて、三人でうろうろ迷宮をさまよったり隠し通路を見つけたりと、「コントラ・デクストラ・アベニュー」の元ネタのWizardry的な展開を挟んで、ドクター・サイクロプスとのご対面となる。
迷宮の主として色々言いたかったドクターには悪いが、まず始まるのはジュノとの言い争いだ。シリーズの看板なのでしょうがない。
やっとドクターが喋る番になっても、あの年になるまで女に縁がなかったという可哀想な過去が明かされるだけだ。
そのあげく、暴走したギャラルホルンに飲み込まれて、ボス名まで取られてしまう。
まさに踏んだり蹴ったり。ふうま君の言うように、ジュノを閉じ込めてもいいことなんか一つも無いことになっている。
さすがに哀れだったので、最後に根性でギャラルホルンの制御を奪い返して逆襲を試みさせた。もっとも、やることは婚姻の誓いの妨害なのだが。

 

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婚姻の誓いについては、三部作のラストということで最初からやると決めていた。
本当に結婚するわけにはいかないので、お芝居くらいが精一杯だ。ゆきかぜとアンジェの二人分の好意を合わせて、ぎりぎり祝福分くらいにはなったのだろう。

ジュノも「いい感じー」とか楽しそうだ。性悪性悪と言われていて、実際そうなのだが、なんだかんだいってカップルが仲良くしているのを見るのは好きなのだろう。でないと祝福係なんてやってられない。

 

結局、そのジューンブライドの祝福を得て勝利するわけだが、そのあたりのくだりについては「幸せいっぱいの神の力」とか「巨大な婚姻エネルギー」とか、ふうま君主観の分かったような分からないようなふわっとした言葉ですませている。
イベント中で起こってるいることについても同様だ。

前回の時間停止といい、今回のブラッホールといい、よく考えると人類存亡レベルの危機なのだが、あくまで軽く書いて軽く終わらせた。

ドタバタイベントだし所詮は人事、ではない神事だ。

 

今回、アンジェの登場がちょっと遅い。

一年前のジューンブライドの時には主役だったので、今回はゆきかぜに出番を譲ってもらった形だ。
ちょうど『お色直し』という言葉がキャラ名に入っていたので、登場時に自分で言っている。
登場が遅れた分、グラビティモンスターを瞬殺したり、ブラックホールに吸い込まれるのを防いだり、婚姻の誓いを躊躇うことなく承知したりと、ジューンブライド経験者の余裕を見せている。
アンジェがふうま君のことをどこまで好きかはなんとも言えないが、本人はあれで本当に結婚しても構わないと思っていそうだ。
ゆきかぜは「ちゃんと恋愛してから結婚! それは絶対!」という考えだろうが、アンジェは「縁のあった相手と結婚してからゆっくり愛情を育んでもそれはそれでいい」というタイプな気がする。
だから五車町に戻ったあと、ちょっと不満そうにしている。決してウェディングドレスだけのことではない。ふうま君はいい加減気づいた方がいい。

 

クライマックスでミナサキが突然現れて蹴りを決めるのは、もう少し出番をあげたくなったので、あの姿の通常攻撃のエフェクトから思いついた。
脈絡がなさすぎるが、『スター・ウォーズ』のエピソード4でもハン・ソロがいきなり現れたりしているので、まあよくある話だ。
ミナサキはヤタガラス族という、実は神と縁がありそうな種族なので、本人の意思とはまるで関係なく、ジュノのピンチに世界のバランスを保とうとする不思議な力っぽいものが働いて、たまたまあの位置に落ちてきたのかもしれない。

そのあたりの神が関わることによる訳のわからない都合の良さは、『夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜』が興味深い。ボスの動機が情けないのも似ている。

 

最後は「本当に三人で結婚しちゃう?」という珍しく好意的なジュノの誘いをふうま君があっさり断って、ゆきかぜがツンデレたり、アンジェが文句を言ったりしておしまいだ。
お芝居とはいえ、ジュノの前でちゃんと婚姻の誓いもしたし、三部作の締めとしてはこんなものだろう。

この先、またジュノが出てきて、私が担当することがあるとしても、できれば違った毛色の話にしたいところだ。さすがにまだ全然考えてない。
バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストの言葉を借りるとすれば、「未来はまだ白紙。なにも決まっていない」というわけだ。

いや、もちろん、イベントのストックはいくつかあるので、まるきり白紙というわけではない。念のため。

 

ではまた。

 

 

*1:その時は気づかなかったが「堀江由衣の天使のたまご」の丸パクリである