対魔忍RPG リーナイベント制作雑感 その1『黒翼の魔界騎士』

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リーナがSRユニットになった。
嵐を呼び桜が舞いラップを刻みガーリーファッションも身につけたリーナがついに桜色の剣気を輝かせる。
その名も【百花繚嵐】リーナ。可愛いね。
などと思っていたら、実装から半年も経ってしまった。
だいぶ機を逸した感があるが、それはそれでリーナらしい気がするので、最近の事なども織り交ぜつつ、またとりとめなく書き連ねてみる。

 

この5人目のリーナが登場したのは、レイドイベント『魔界騎士の資格』だ。
その直後に実装されたメインクエスト『黒翼の魔界騎士』でも主役になっている。
当然、シナリオは同時期に続けて書いたわけだが、そもそものストーリーを考えたのは後発の『黒翼の魔界騎士』の方が先だ。
そこで、制作雑感その1ではこの『黒翼の魔界騎士』について述べ、『魔界騎士の資格』についてはその2で別に語ることにする。

 

さて、この話はそれよりだいぶ前のイベントを制作していたころ、「そのうちリーナがSRキャラになるのでメインクエストの主役でなにかよろしく」という依頼があり、「リーナが主役!? ウラーーー!」ってな感じで、そのうちとか関係なくすぐさま考えてしまったストーリーが大本になっている。
その後、『魔界騎士の資格』を先に実装することになったので多少変更を加えたが、大筋はその時に勢いで作ったそのままだ。
ちょうどそのころ、リーナがSRキャラになるかとか関係なく、やりたいことがあったので、それを元にストーリーを組み立てている。
やりたいこととは以下の三つだ。
・自称魔界騎士問題の解消
・他の魔界騎士を出したい
・ライバルを出したい

 

まずは自称魔界騎士問題の解消だ。
リーナはことあるごとに私は魔界騎士、私は魔界騎士と言ってるが、「それは勝手に言ってるだけじゃないの?」という疑問が常にあった。魔界騎士詐称疑惑だ。
というのも、魔界騎士とは魔界を支配する連合にのみ仕える存在云々という設定があったからだ。
公式設定資料集 対魔忍Saga』にも、ほらこの通りちゃんと書いている。

 

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キャプションにあるように、魔界騎士の代表であるイングリッドはいきなりそれに背いている困り者なわけだが、少なくとも一度は魔界で正式に任命されているはずだ。
一方、リーナは『決戦アリーナ』でどうだったのかは不明だが、少なくとも『対魔忍RPG』では『二人の魔界騎士』で書いたように、武者修行の途中でイングリッドについて行ったのだから、正式に任命などされていないだろう。
つまり、ただの自称魔界騎士か、せいぜいイングリッドに名乗るのを許されたくらいである。
これまではそのあたりを曖昧にしておいたが、そろそろはっきりさせておきたい。
というよりも、リーナを本物の魔界騎士にしてあげたい。

 

さて、どうするか。
まず考えたのが、『リーナちゃん、魔界騎士の試験を受けに行く』という話だ。これは盛り上がりそうだ。
NARUTO -ナルト-』の中忍試験といい、『HUNTER×HUNTER』のハンター試験と言い、この手の話はたいてい面白くなる。
なにしろリーナは魔界では雑種と呼ばれる存在で、連合を裏切ったイングリッドに仕えていて、しかもポンコツというマイナスが三つもあるポジションだ。
そのリーナが魔界騎士の試験に単身赴き、誇り高きエリートや、お高くとまった嫌なやつや、常にナンバー2の努力家や、名家の出身だが自分に自信のない子や、リーナ以上に天然の天才といったお約束な連中とぶつかり合いながら魔界騎士を目指す。
しかし、その裏には彼女たちの知らない恐るべき陰謀が――ってなことをやり始めたらえらい楽しくなりそうなのだがメインクエストひとつではとても終わらない。新しい絵素材も山ほどいる。ということで断念。

 

次に考えたのが、『リーナちゃんの魔界騎士めぐり』。
つまり連合から正式に魔界騎士と認められるわけではないが、他の魔界騎士たちによって略式に認められるという話だ。
ファイブスター物語』でいうところの、騎士級の見届け人が三人以上いれば、正式なお披露目でなくても、略式的にファティマのマスターと認められるというアレである。
認め人を三人とすると、イングリッドの他にあと二人、魔界騎士がいればいい。
まずリーナの本気を示すためにイングリッドと立ち会わさせ、それから二人の魔界騎士に会いに行くという展開ではどうだろう。
これなら新しい魔界騎士をストーリーに沿った形で出すことができそうだ。
新しいと言っても、『対魔忍アサギ 決戦アリーナ』に何人か魔界騎士がいたので、素材はそいつらを使い回せばいい。
ついでに、どちらかの魔界騎士の弟子にリーナのライバルキャラを設定して、その子と勝負させよう。もちろんリーナとは正反対の子だ。

 

ただ、やはり最後にはラスボス的な相手との戦いが欲しい。
それに自称よりましとはいえ、せっかく主役を張ってもらうのに、その結果が略式の魔界騎士ではリーナに申し訳ない。
というわけで、三人の認め人のアイデアをもう一歩進めて、今ではもう知られていないが“原初の魔界騎士の試練”というものがあり、本来はそれを乗り越えた者だけが魔界騎士と呼ばれていたという設定を思いついた。
これなら9貴族も連合も関係なく、リーナを本物の魔界騎士にできるし、イングリッドがいまだに魔界騎士を名乗っている理由にもなる。

 

その試練で戦う相手は、これはもう自分自身しかあり得ない。自分の弱い心が生み出した影というお約束のパターンだ。
元ネタは山ほどあるが、ここは『ハートキャッチプリキュア』の37話「強くなります!試練はプリキュア対プリキュア!!」をあげておこう。
リーナが主役のメインクエストで、彼女の弱い心が生み出した理想の自分、完全無欠のリーナがラスボスとして出てくる。実に私好みだ。新しいリーナも作画してもらえるしね。
そんな感じでアイデアをまとめたら、めでたくOKをもらえた。

 

リーナの心が生み出した影、そのイメージもすでにあった。
旭さんが以前描かれたこのカッコいいリーナだ。

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このキリッとした姿と、憧れている伝説の黒鳥と、尊敬するイングリッドの姿とをミックスした感じでデザインしてもらった。
リーナが考えた理想の自分なので、首と片足に包帯を巻いていたりする。旭さんのデザイン画の注釈には「中二感」とあった。

 

そして二人の新たな魔界騎士のうち、カルメラは使い回しだが、もう一人はベオウルフという新キャラ、その弟子のアデルハイトも新たに作画してもらえることになった。
ベオウルフはすでに設定があったので、アデルハイトは彼女と同じ魔眼使いとし、先行するイベント『魔界騎士の資格』で登場させることにした。
ベオウルフとアデルハイトという新キャラがいきなり二人出てきて、一人はイングリッドのライバル、もう一人リーナのライバルと慌ただしく紹介するよりも、こないだ知り合った子と再会して、その師匠が新キャラという流れの方がスムーズだからだ。

 

ストーリーはお馴染みのリーナのパトロールから始まっている。
以前、リーナが主人公となった『二人の魔界騎士』では、リーナとヨミハラの普通の人々との触れ合いを描いた。
また同じことをやってもつまらないので、今回は同じノマドの人たち、朧やフュルスト、それから実はブラックの配下のユーリヤを訪ねることにした。
同じノマドと言っても、イングリッド組は治安維持、朧組はショーパブで踊ったり取り立てをしたりの小商い、フュルスト組はとにかく外で悪巧みと、それぞれ全く別のことをしているので、今までストーリー上でほとんど接点がない。
まあ、普通の会社でもよく知っているのは同じ課の人たちと同じフロアにいる人と同期くらいで、部署や階が違う人とはろくに話したこともなかったりするので、リアルと言えばリアルである。

 

リーナがイングリッドの手紙を渡しに行くだけだが、違う部署の長であるフュルストや朧とどんな風に接しているのか考えるのは面白かった。
リーナはいつも通りでいいとして、朧やフュルストは魔界騎士としての実力は認めた上で、リーナをわりと苦手にしているという風に書いている。
どちらも細かく策略を巡らせるタイプなので、良くも悪くもそれをまるきり無視して、物理的にも精神的にもひょいと懐に飛び込んできてしまうリーナのようなタイプはやりにくいはずだ。
そんなわけで、朧は一番間の悪いときに来られて焦っているし、フュルストもせっかくかけた迷いの結界をなんとなく突破されてしかめっ面で出てくる。

 

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ただ、朧に関してはその後の『ヨミハラサイドストーリー』で、実は最弱の半妖であったという話が出てきたので、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険』のミストバーンのように、自分と似たような境遇から努力で強くなったリーナのことは、苦手ではあるがわりと気に入っているのではないかと個人的には思っている。

 

そして、お使いの帰り道に刺客に襲われる。
ここからが本題、今回のストーリーにおけるリーナの動機付けの場面だ。
なにしろ今まで堂々と魔界騎士を名乗っていたリーナが改めて正式な試練を受けに行くのだから、それなりの理由が必要だ。
どうするか色々と考えたが、リーナは自分自身が何が言われるのは気にしないので、自分の存在がイングリッドを蔑めることになるかもしれないのが一番嫌だろうとああいう形になった。
ヨミハラは生まれや過去にこだわらない、現在の実力だけが全ての、はみ出し者にとってはとても居心地のいい場所だ。
お使いの場面で描いたように、魔族としては遙かに格上の朧やフェルストもリーナを普通に認めている。
そのヨミハラ感覚に馴染みすぎたリーナが、久しぶりに魔界の常識という悪意にあてられ、思わぬショックを受けるという流れだ。
例によって画面ではいつもと同じ顔をしているが、きっとこの旭さんの同人誌「対魔忍アサギ設定アリーナ」に描かれているようにしょんぼりしているに違いない。泣き顔もいいね。

 

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しかし、リーナが落ち込んでしまったため、その後に始まるせっかくのお茶会ではみんなに心配されるだけになってしまった。
あの連中がお茶とお菓子を楽しみながら、本当にどうでもいい話をするだけのシーンとかとても書きたかったが、それでは話が進まない。
結局、あの話し下手なドロレスのとりなしで、イングリッドから魔界騎士の本来の姿と、その試練について語られることになる。
それにしても、まだ考えてなかったからというこちらの事情はともかく、今回のことといい、サクラブロッサムの真の力のことといい、「魔界騎士は黙ってヨミハラビール」じゃあるまいし、イングリッドはそういうことをもっとちゃんとリーナに言ってやれという気はしている。

 

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その後のリーナとイングリッドとの対決は前々から書きたかったシーンだ。
イメージは、『北斗の拳』のケンシロウとトキとの対決、あるいは『るろうに剣心』最終回の青年弥彦と剣心との対決だ。
だから勝負はただの一撃、ついにリーナがイングリッドと互角の技を放ち、その覚悟を伝えるというお約束な展開になっている。
このイベントとは全く関係なく、この二人のこういうシーンをやれたらいいなと考えていたので実に嬉しい。
ちなみに、互角の一撃を放てるようになったからといって、トータルでの実力まで互角になったわけではない。念のため。
イングリッドの右腕なので、立場的にはフュルストの腹心であるヴィネア、シームルグ、ニールセン、オロバスといった連中と同じだが、フュルストがヴィネアに油断するなと警告しているし、あいつらは『五車決戦』であまり役に立たないことが判明したので、それよりは強いと思いたい。

 

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ともあれ、リーナは試練を受けるため魔界騎士に会いに行くことになる。
ただその前にちょっと寄り道してもらった。
セルヴィアの過去についてもう少し膨らませておきたかったこともあり、二人でかつての領地を訪ねている。
もちろん、セルヴィアはリーナが心配だから魔界についていったのであり、仇の一人を倒した報告というのはその口実だ。
『幻影不知火』の時に、黒斗の散歩のシーンでセルヴィアが仇討ちに出かける所をなんとなく入れておいたのが役に立った。
しかし墓参りをすませると、リーナについていく理由がなくなってしまった。ツンデレはやめておけという見本だ。
セルヴィアについては、グラハムという仇の名前も分かったし、その後の『ヨミハラサイドストーリー』で死霊卿という大仰な二つ名のわりにフットワークの軽いテウタテスが一枚噛んできたので、もう少し話が膨らみそうな気がしている。

 

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セルヴィアと別れたリーナはまず魔界騎士カルメラを尋ねる。
顔のついた変な盾を二つ持っているのが特徴で、『双貌』という異名は今回考えた。
この人は『対魔忍アサギ 決戦アリーナ』にも出ていて、エロ絵2枚のユニットが一つだ。
イベントの登場はたった一回だが、そこでリーナに偶然出会って憧れられたり、その後で対決したりと、似たようなことをやっている。
もっとも、そちらではカルメライングリッドを倒して自分が最強の座に座ろうとしているし、リーナはすでにイングリッドの元から離れていたりしているのだが。

 

それはさておき、こっちでリーナが何をするかというと掃除の手伝いだ。
ドラゴンボール』の牛乳配達、『ベスト・キッド』の「ワックスかける、ワックスとる」を例に出すまでもなく、修行とかテストで一風変ったことをさせられるのはお約束だ。
また、このシーンではまっとうな魔界騎士から見たリーナを示すため、カルメラの心の声を多く使っている。
そして、リーナの『強さ』だけを評価するのではないという展開にした。これはイングリッドやベオウルフでも同じだ。
魔界騎士として強いのは大前提。今更それを認めさせてもしょうがない。
結局、ちっとも魔界騎士らしくないし、そもそも魔族らしくもないという、リーナの面白みで合格ということになった。

 

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次はイングリッドの親友のベオウルフだ。
領地に引きこもって隠遁生活をしているという設定だったので、いきなりその本人に会うのではなく、リーナが街の噂を聞く場面から始めている。
以前もこのブログで書いたように、そういう聞いたか坊主的な説明は好きじゃないのだが、ベオウルフがいきなり「私は隠遁生活をしていてね」とか自分の設定を話し始めるよりはいい。
そのしなければならない説明をしつつ、ここではリーナが酒場にいた連中にしろ使えない門番にしろ、まず低く見られるという描写を入れている。


おそらくそれが魔界騎士になっても変わらないリーナの魔界でのポジションだ。よほど弱そうに見えるのだろう。
実は結構目をかけていたセルヴィアや、エリート貴族なのにそういう偏見がないアデルハイトはかなりの例外のはずだ。
リーナはというと、相手が自分より弱そうに見えても基本的には油断しない。相手が自分より強そうなのはいつものことだし、そもそも『強い』の基準がイングリッドなので、犬以外は別に恐れないといったスタンスのはずだ。
そのあたりのリーナらしさを、ベオウルフが武器を持って現れたときのアデルハイトとの反応の違いで示してみた。ベオウルフはそのリアクションと、アデルハイトを成長させたと言う点で彼女を認めることになる。
アデルハイトについては、制作雑感その2で詳しく述べる。
それにしても「どんな強い相手もおそれない。同時に弱い相手もみくびらない」というのは、映画『ドラえもん』屈指の悪役ギラーミンと同じなのだが、なんでこうもイメージが違うのだろうか。

 

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三人の魔界騎士認めてもらった後は、いよいよ試練の山に向かう。
ここまで戦闘シーンはさらっと済ませてきたので、ここでの連戦は少ししっかりめに書いた。
「うなれダークフレイム!」とかやってれば大抵事足りてしまうイングリッドと違って、リーナには今ままでの経験や勘に基づいて、瞬間瞬間で細かく判断し、色々な技を駆使して戦ってもらっている。このへんの描写は『降ったと思えば土砂降り』や『二人の魔界騎士』のころからわりと意識している。
苦手な犬ともちゃんと戦えている。以前はただ逃げ回っていたことを考えると確実に成長している。
それでもブレスを使う犬の軍団には苦戦してもらった。イングリッドと互角の一撃を放てるようになっても、ドズルの言うとおりやはり戦いは数だ。『ウィザードリィ』なんかでも、一匹では大して強くないヘルハウンド部隊の不意打ちを食らってブレスで死人続出、即リセットとかよくある話だ。
そして、今度こそ本当に犬に惨殺されそうになったところで、お約束の展開でセルヴィアやリリスが駆けつける。

 

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リリスとの対面は『二人の魔界騎士』の回想シーン以来となる。
この二人は、もちろんあの後も普通に会っているはずだが、現在の物語上で顔を合わせるのはこの回が初めてだ。
せっかく今まで会わせずにいられたので、どうせならピンチにいきなり現れてもらおうと、リリスにはお茶会にも欠席してもらった。
日頃疎遠でも難儀の時にこそひょっこり現れ、救いの手を差し伸べるという、『花の慶次』でいう奥村助右衛門のような登場の仕方だ。きっと徳川家康もほっこりしてくれるだろう。

 

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そして原初の魔界騎士の試練。
影リーナとの対決はこんな場面を想像して書いた。
心が折れかけ、うずくまるリーナ。
それを黒い翼を広げた影リーナが上空から傲然と見下ろしている。
リーナは挫けそうになりながらも、風の魔剣を大地にしっかりと構え、勇気を振り絞って立ち上がる。
つまり、この『超重神グラヴィオンZwei』のオープニングみたいな絵面だ。

 

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アニメだったら間違いなくリーナのテーマソングが鳴り出すところだ。
しかし、今のところ使える曲は『魔界騎士だぜヘイチェッケラ!』と『ノマド節』、そして、ようやくほぼ全部歌うことができた『魔界騎士リーナ』しかない。
どの曲にしろ始まった途端、いつものポンコツな場面になってしまう。なんてことだ。
いや待てよ、『サクラにアラシ』という曲があった。よしそれでいこう。


曲も決まったので、影リーナとのバトルについてもう少し語ることにする。
相手は自分の弱い心が生み出した影なので、聞きたくないことを聞かされる精神攻撃がメインとなる。
リーナはそれに理屈ではなく心の強さで打ち勝つのだが、このバトルをもっとロジカルにすることも考えてはいた。
例えば、相手は理想の自分なので、自分が思い描いた通りの攻撃をしてくる。だからその攻撃を完全に読み切って、理想の自分の100の力を利用し、ちっぽけな今の自分の1の力を上乗せして勝つ。
あるいは、相手は確かに理想の自分だが、それは試練が始まった瞬間のものだ。リーナはこの試練の間もより高い自分を目指して成長しているから、そんな過去の理想に負けたりしないといった風にだ。
しかし、この手の試練でそういう理屈を前面に押し出すのも違う気がしたので、とにかくもう気持ちの強さだけで勝ってしまうことにした。
個人的には、ここでリーナを象徴する「ポンコツ」というカッコ悪い言葉を使えたことに満足している。
『雷神の対魔忍』でアルサールにとどめを刺すときの「俺たちは対魔忍だ」もそうだが、ここぞというタイミングでカッコよく聞こえる言葉が私は好きだ。

 

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そうそう、影リーナが持っている剣がセルヴィアからもらった風の魔剣というのは旭さんのアイデアだ。
デザイン発注の際に「なにか伝説の風の魔剣っぽいもの」とお願いしたらこうなった。
そりゃそうだ。リーナの理想の姿なんだから、そこらにある伝説の魔剣なんかより、ちゃんと自分の名を刻んだ風の魔剣を持ちたいに決まっている。なぜ発注時にそこに気づかなかったか。不覚。
私も当初からラストバトルでは【楼嵐武闘】でも【百花繚嵐】でもない、ただのリーナの絵を使いたかったので、まず見た目に良い対比になった。
そして、周りにはセルヴィアからもらった剣だからそのまま使っていると言い、それも本心ではあるだろうが、その一方で剣に名前を刻む自信がなかった、つまり自分が魔界騎士と言い切る自信がなかったリーナが、ちゃんとした剣を持った理想の自分に勝ち、自分が魔界騎士であることを確信して、名前を剣に刻んでもらうというイベントのテーマにそった美しい流れができあがった。
剣のデザインひとつでこれだ。旭さん流石だ。

 

こうしてリーナは正式な魔界騎士になった。
よかったよかった。
お祝いに『魔界騎士リーナ』の歌詞を載せて、この記事を終わることにする。メロディは『ひょっこりひょうたん島』である。
アデルハイトが出てくる『魔界騎士の資格』については、制作雑感その2で。
ではまた。

 

『魔界騎士リーナ』

 風をびゅんびゅんびゅんびゅん切り裂いて
 嵐をぶんぶんぶんぶん巻き起こし
 魔界騎士はどこへゆく
 ラップを決めてどこへゆく
 深いノマドの地下宮殿に
 仲間がみんなが待っている
 ずっこけることもあるだろさ
 ポンコツることもあるだろさ
 だけど私はくじけない
 楼嵐武闘だヘイチェケラ!
 進め
 魔界騎士リーナ
 魔界騎士リーナ
 魔界騎士リーナ