対魔忍RPG リーナイベント制作雑感 その2『魔界騎士の資格』

『魔界騎士の資格』は【百花繚嵐】リーナのお披露目回だ。
ふうま君視点から話が始まり、リーナ視点の話になり、またふうま君視点に戻って、それぞれが合流するというオーソドックスな作りだ。
そして、それぞれ初登場のキャラと行動を共にしている。
ふうま君のパートナーはリノア・セリング。この子はイベント報酬キャラなので順当だ。
一方、リーナは彼女と同じように魔界騎士を目指しているアデルハイト、通称ハイジが相棒となる。

 

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アデルハイトはずっと出したかったリーナのライバルキャラだ。
リーナにはリリス、ドロレス、エレーナ、セルヴィアといった魔族の友人がいるが、全員が魔術師系で戦闘では後ろからサポートする係だ。
イングリッドは同じ魔界騎士だが、今度はリーナがサポートする側になってしまう。むしろ自分から喜んでそうしている。
肩を並べて戦う対等な相手が欲しかったので、イングリッドの親友ベオウルフという新たな魔界騎士登場の前振りとして、こちらのイベントで先に出てもらった。

 

最初からリーナのライバルとして考えたので、リーナとは正反対の属性を色々と持たせている。
つまり名門貴族の生まれで、生まれつきの魔力も強く、正統派の剣術を使うが、実戦経験はそれほど多くない、性格は堅物で、友達を作るのは苦手、そして胸が小さいといった具合だ。
剣を左手に持たせたのは作画担当の羽倉ぼう氏だ。
確かに、サウスポーの方が二人で並んだときに映える。
プリキュアのブラックとホワイトだって、並んだときに大抵別々の手で左右対称になるようにポーズを決めている。  
こういうのをピンポイントで入れてくるセンスには脱帽する。


当初、このアデルハイトはもっとクールなキャラにするつもりだった。
しかし、自分からアザンの館に乗り込んでいったリーナが突入前にちゃんと様子を伺っていたのに対し、後からやって来たアデルハイトがあっさり犬の罠にひっかかり、これ幸いと共闘しようとしたリーナに剣を向けたあたりで、もうすでにポンコツフィールドの影響を受けてたらしく、終わりまで書いたら凸凹コンビっぽくなっていた。
もっとも、『戦姫絶唱シンフォギア』の風鳴翼とかがそうであるように、この手の真面目キャラがちょっとズレているのもお約束ではある。
実際、キャラデザの時に考えたセリフですでにこんなことを言っていた。
「は、恥を忍んで伺います。あの……どうやったらその……む、胸がそのように大きくなるのでしょうか? わたくし、こんな胸では魔界騎士に相応しくないのではないかと……」

 

そんなアデルハイト(Adelheid)の名前は、ドイツ語で「気高い姿」といった意味だ。
名は体を表すそのままの命名で、愛称のハイジはアルプスの少女と同じだ。
そうすると役割的にリーナはクララになるわけだが、ドイツ語のクララは「光り輝く、著明な、立派な」といった意味だそうだ。はっはっは。
まあ、リーナも最初の頃よりは光り輝いてるし、キャラ的には「立った立った、リーナが立った」なので良しとしよう。

 

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一方、ふうま君と組むリノアは対魔忍でも魔族でもサイボーグでもない普通の人間、しかし天才という、対魔忍RPGでは珍らしめのキャラだ。
ラプラスという変なロボットを使うが、ルネのようにそれに乗り込んだりはせず、魔法的な事象を分析し、予測し、再現するという、よく分からない超技術を使う。やってることは全然違うが、藤崎竜版『封神演義』の普賢にちょっと似ている。
執筆時にあった資料は設定書、フレーバーセリフ、それとエロシーンくらいだったが、そこではふうま君ともうだいぶ仲良くなっていたため、このイベントではそれよりも抑えめな描写にしている。
リノアは私が考えたキャラではなく、たまたまこのタイミングでこういう設定の子が実装されることになったので、それをイベントストーリーに組み込んだ形だ。
とりあえず初登場なので、まずラプラスを使った彼女の能力を紹介している。当然、クライマックスで使うためだ。
こういう能力がありますと文字だけで説明するのは上手くないので、ユーザーと同じく、ふうま君とも初対面ということにして、ちょうど桐生の助手になっていたので、いきなりラプラスで桐生に雷をぶつけ、行動予測して手玉に取るという登場シーンにしてみた。
この結果、クールキャラのわりに自分からグイグイ動いてくれるという、実に使いやすいキャラになった。
彼女はこのイベントの少し後のメインクエスト『失われたもの』にも出ていて、若さくらとSFの話題で盛り上がったりしている。若さくらは変な映画が好きだし、二人で『不思議惑星キン・ザ・ザ』とか見ている気がする。この映画、つい最近『クー!キン・ザザ』というアニメになっていたそうだ。知らんかった。

 

さて、リーナと探偵チームとの会話とか、アデルハイトとのポンコツな掛け合いとか、語りたいことは色々とあるのだが、今回は目玉である【百花繚嵐】リーナの登場シーンに焦点を当てることにする。
カッコよくて可愛いリーナの新フォームだ。
やはりここは、【不滅の邪炎】イングリッドのお披露目となった『魔界騎士と次元の悪魔』の時のようにラストバトルでババーンと出したい。

 

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設定書によると、あの衣装はノマドの面々にデザインしてもらったものだそうで、アジトセリフでもそう言っている。
確かに『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のように、決戦の前に新しいコスチュームを作るというのはなかなか燃えるが、今回はラストバトルで真の力を引き出したら、いきなりあの姿に変わったということにした。
設定と違う? いや、デザインしてもらったと言っているだけで、作ってもらったとは言っていない。
きっと剣に合わせたデザイン画を描いてもらっていて、「これはかっこいいな、こんな姿になりたいな」とずっと頭にあったので、その姿に変身してしまったのだろう。そうに違いない。

 

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リーナを変身させた魔剣サクラブロッサムが魔界の聖魔桜と繋がっていて云々というのはもちろん後付けだ。
しかし、その後付設定をリーナがバトル中にいきなり「このサクラブロッサムには真の力がある。それを引き出すことができれば」とか言い出すのはさすがに不自然だ。
そこでリーナは本当に知らなかったことにして、同じ唐突な説明ならばと、新キャラのアデルハイトに「そういえば聞いたことがあります」ってな感じでやってもらった。
魔界の知識に色々と詳しそうだし、この先も後付けで色々やるときに便利そうな子だ。
同じく初登場のリノアは科学方面のいい解説役であり、すでに『失われたもの』や『五車決戦』などで活躍してくれているので、アデルハイトにも頑張ってもらいたい。
この「木と同期している剣」の元ネタは、『スレイヤーズ』の祝福の剣(ブレス・ブレード)だ。
リナでもガウリイでもゼルガディスでもアメリアでもない、ランツというアニメには出ていないキャラが小説で使っていて、その特性を利用して自分よりはるかに格上の魔族を倒している。地味だがわりと好きな戦いだ。

 

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そのサクラブロッサムの真の力を引き出すにあたっては、アデルハイトだけではなく、リノアにも活躍してもらった。
それでこそ、リーナとふうま君をそれぞれ新キャラと組ませてから、二つのストーリーを合流させた意味がある。
リノアの色々と分析するのが得意という、たまたまの設定をここで使っている。
それがなくとも、リノアにはクライマックスで何かやってもらうつもりだったが、こういう偶然をストーリーに組み込むのは作っていて楽しい。

 

そして仲立ちをするのはふうま君だ。
ドロレスの新しい友達で、リーナが作ったイングリッドのブロマイドもあげている相手、きっと『ニートにメイド』の後に色々と話を聞いていたのだろう、そんな人物のアドバイスだからこそ、リーナも信用するという展開になっている。
つまり、ピンチに陥ったことによる感情の爆発(イヤボーン)とか、日常のちょっとした出来事がヒントになって気づきを得る(エヴァの熱膨張)とかではく、友達と友達の輪で窮地を脱したわけだ。
その方がふうま君とリーナが共闘するイベントにふさわしい。

 

ただ、ふうま君の出番はそれくらいだ。
アザンの最初の音波攻撃を防御したのはリーナだし、2度目はリノアが勝手に無効化したし、頭に血が上ったリーナの尻を叩くのも、最後の時間稼ぎもアデルハイトの役目だ。
真の力の引き出し方のアドバイスをするくらいで、ふうま君には脇役に徹してもらった。
リーナには、まだ顔も覚えてられてなかったようなのでしょうがない。
ふうま君は「そんなに印象に残らない顔なのかな?」とか言っていたが、前に2回出会った時は立ち絵がまだ存在しておらず、そもそも顔がなかったのだ。覚えているはずがない。

 

サクラブロッサムで九頭龍閃をやるみたいな真の力の引き出し方は、別に私が『るろうに剣心』を好きだからとかではなく、ちゃんと設定書にあった技のアクションにのっとっている。
それによると、スキル2は「桜の花びらが一枚舞い降り、目で追えない高速で刀を振るうと、花びらが『米』の字に切れて、同じ形の桜色の剣閃が敵を斬り裂く」という技らしい。えらいかっこいいな。
米印なので突きを加えて9連撃。
イメージは、サクラブロッサムで作り出した桜色のエネルギーフィールドにリーナが突っ込んで変身する感じだ。仮面ライダーのフォームチェンジを想像して欲しい。
先に述べたように、衣装替えではなく変身にしたのは場面を盛り上げるためだが、今までのリーナの絵もまだまだ使いたいので、そちらの方がなにかと都合がいいという理由もある。

 

それはさておき、サクラブロッサムの真の力が解放されると、アデルハイトが「すごい魔力」と言ってるようにリーナの魔力がブーストされる。
つまりこういうことなんだろう。
イングリッドは生まれつきの魔力が少ないリーナのことを思ってそういう剣を与えた。
しかしリーナを慢心させないために、その隠し能力のことはあえて教えなかった。
そして『二人の魔界騎士』のとき、かつて自分が教えた技セブンスハリケーンを自分以上に見事に放ったリーナに、サクラブロッサムの真の力を使う資格があるとみなし、9連撃にしたらどうだとヒントを与えた。
おお、まるで最初からそう考えていたかのように、うまいこと話が繋がったではないか。

 

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そんなこんなでリーナがアザンを倒し、エピローグではアデルハイトがイングリッドの親友の魔界騎士ベオウルフの弟子であることが明かされる。
そして、私たちもあの二人のようになろうと誓い合って、お話は『黒翼の魔界騎士』へと続いていく。
そちらの話は制作雑感その1で。
ではまた。