エロゲ会社に応募書類を出す前にチェックすべき7つのこと。

昨今のエロゲ業界。
大作、話題作がなくなって、市場が停滞している。
売れているのと売れていないのとの二極化がますます進んでいる。
などなど、あまり景気のいい話は聞こえてこないのだが、業界を目指す人はまだまだ多い。良いことだ。


以前、制作会社に所属していた時は、そんな業界志望者の応募書類をしばしばチェックしていた。
フリーになった今でも、「この人、ヘルプのライターとしてどう?」などと言われて、書類に目を通すことがある。
その際、最もポイントとなるのは、言うまでもなく作品サンプル、シナリオライター志望の場合はサンプルシナリオだ。
その出来不出来に比べれば、履歴書に空白が有ろうが無かろうがさしたる問題ではない。


ただ、今まで色々なサンプルシナリオを見てきて、一つ感じていることがある。
出来不出来以前に、サンプルシナリオとしての体裁が整っていないものが結構あるということだ。
エロゲのシナリオは、同じシナリオとは言ってもTVや映画のそれとは全く書式が違うので注意が必要だが、そういうことではなく書類の見た目からしてちょっと変なのだ。
例えるなら、履歴書に生年月日が書いていないようなもので、悪いとは思うが、サンプルを読む前から「こいつダメだな」と妙なバイアスがかかってしまう。


とはいっても、肝心のエロゲ会社の募集要項を見ても、「サンプルを添付して」くらいしか書いていないことがほとんどで、サンプルをどう書けばいいのか志望者が戸惑うのも無理のないことだろう。


そこで以下に、エロゲ会社に送るサンプルシナリオには最低限これを書いておけ、ということをまとめてみる。
エロゲ会社に書類を送る前にこれでチェックすれば、体裁の不備による先入観をもたれなくてすむかもしれない。

1 タイトルをつける

 サンプルシナリオとはいえ、一つの作品だ。
 その作品に相応しいタイトルをちゃんとつける。
 何も書いていないのはもちろん、「サンプルシナリオ」というタイトルは寂しすぎる。

2 登場キャラクターの一覧をつける

 キャラクターの名前、その読み、年齢、職業、主人公との関係など簡単にまとめておく。
 エロゲ会社のOHPにある「キャラ紹介」とは違って宣伝文ではないので、「意地っ張りで口も手も早く、自分の気持ちに素直になれず、主人公にどうしても好きだと言えない」などと書く必要はない。
 それはサンプル本編で見せること。
 なお、商品では年齢をあえて秘密にしていることが多いので書くのを忘れがち。注意。

3 あらすじを書く。

 淡々としたものでよいので、話の最初から最後まで全部書く。
 これもOHPの「あらすじ」ではないので、「そして正体不明の美女が」とか「ついに衝撃の展開が」などと書いたまま、途中で止めてはいけない。
「シナリオを読む前にオチをバラしたら面白さが半減する」という向きもあるだろうが、サンプルは「面白いかどうか」よりも、「シナリオとしてちゃんと書けているか」をチェックしている。
 そのためには、予め話が分かっている方がよい。


 タイトル、登場キャラクター、あらすじ。
 ここまでは、サンプルシナリオに入る前に書いておくべきことだ。
 以下は、サンプル本編の話。

4 セリフには冠をつける

 最も一般的なエロゲシナリオは、主人公のモノローグと、キャラのセリフとで構成されている。
 他にも背景&立ち絵の指定やら、イベント絵の指示やらあるが、文章的にはその二つが基本だ。
 メーカーごとにシナリオ書式も若干の違いがあって(主にスクリプト化のため)、モノローグはべた書きする所、(モノ)などと断ってから書くところ色々あるが、キャラのセリフには冠(かんむり)を必ずつける。
 冠とは、そのセリフを喋っているキャラクターの名前のことであり、セリフの括弧「」の前におくのが普通だ。
 演出上、最初は名前を隠したい場合でも正しく冠をつけ、注として「冠は???」などと記載する。
例えば、

エル「妾を目覚めさせたのは貴様か?」
//↑冠は「赤い目の少女」で
時雄「だ、誰だ……?」
エル「怯えておるな、可愛い奴よな。妾はエル。誇り高き吸血姫の長じゃ」

 冠をつけるのはTVや映画などのシナリオでも鉄則だが、エロゲではアフレコでボイスの録り漏れを防ぐために、それがより重要となる。

5 メッセージウインドウを意識する

 現在、主流となっているエロゲは、画面下部のメッセージウインドウ内にシナリオが次々と表示されていくタイプだ。
 すなわち、マウスをクリックすると前のメッセージが消えて、次のセリフなり、モノローグなりのメッセージが表示される。
 シナリオを書く際にはこれを意識する。
 第一に文字数。
 メッセージウインドウ内の文字数は、メーカーによって様々である。
 応募するメーカーのそれに合わせてもよいが、いくつもの所に応募することを考えると20字×3=60字程度で押さえておけばよい。
 なお、メッセージウインドウ表示の場合、全く同じメッセージが続くとユーザが混乱するので避けるべき。
 例えば、

 リリリ、リリリ
 リリリ、リリリ
 電話が鳴っていた。

 このように書くと、一行目の「リリリ、リリリ」でマウスをクリックしても、次も全く同じメッセージが表示されるため、見た目が変化しない。これはマズイ。


 もちろん、画面の上から下までシナリオが表示される、ノベル形式のエロゲが主流のメーカーに応募する際はそちらに合わせる。

6 Hシーンは必ず入れる

 当然である。
「エロシーンは書きたくない」と思うのは結構だが、サンプルにはきちんと入れる。
 でないと、エロが書けるのかどうか判断できない。
 エロゲ会社に入った場合、大抵最初にやることになるのがエロシーンのヘルプであることも関係している。


 なお、面接においても「エロは書きたくない」の発言をする者がたまにいる。
 どうやら、「それでも雇うほどの価値が自分にあります。エロなしでも感動的な話が書けます」と、逆にそのことでアピールしているらしいのだが、個人的には逆効果にしかならないと思う。


 脇道にそれたが、エロシーンがちゃんと書けるかどうかをチェックしているので、そのエロの流れ自体をスタンダードなものにしておくのは一つの手だ。
 つまり、純愛物のサンプルであれば、キス、愛撫、フェラ、挿入、絶頂……といった感じだろうか。
 「幼馴染みとの初体験でいきなりアナル責め」というのは面白いと思うが、やるなら選択肢で分岐させた方がいいかもしれない。

7 Hシーンはセリフとモノローグをバランス良く。基本は女性の喘ぎ。

 エロシーンでは、ユーザーは女性キャラクターの喘ぎがまず聞きたい。
 サンプルシナリオを見る側も、それがちゃんと書けているのかが知りたい。
 従って、Hシーンでは女性キャラのセリフを基本として、それに男性キャラのセリフ、さらには女性キャラのリアクション、男性キャラのアクションなどのモノローグを絡めていくようにする。
 それらの比率は、応募したい会社の過去作品を参考にすればよい。
 大抵、同じリズムで書いているし、誰かのヘルプとして書くときも、そのリズムを合わせるのが一つの方法だ。
 なお、輪姦などでは、男性キャラ同士が掛け合いをしてしまいがちなので注意すること。
 例えば、一対四のエロシーンで、

女「い、いや……やめてください」
男1「なにがやめろだ。こんな濡らしやがって」
男2「見ろよ。膝まで愛液が垂れ落ちてやがる」
男3「ホントだ。すげえ、こんな嫌らしいマ〇コ、初めて見たぜ」
男1「奥さん、俺たちが欲しくてしょうがないんだろう? さっきから物欲しそうにクパクパうねってるぜ」
女「やめて……そんなこと言わないで……」

 これはセリフだけだが、男同士の掛け合いで4クリックも女性キャラの喘ぎがないのは寂しい。
 Hシーン的には、「こんなに濡らして」「物欲しそうにクパクパ」の状況を、モノローグで書きたいから尚更だ。
「あ、あぁぁ……」でもいいから、女の喘ぎを挟み込む。




以上、こんな所だろうか。
後半は、サンプルシナリオとしての体裁から離れて、もう少し突っ込んだ内容になってしまったが、ネタが尽きたということで許して頂きたい。
ともあれ、エロゲシナリオライター志望者の何かの助けになれば幸いだ。


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