対魔忍RPG 『怒れる猫と水着のお姉さま』 制作雑感
『怒れる猫と水着のお姉さま』は、2020年の水着イベントの第二弾だ。
第一弾の『渚の魔女と小さな騎士』はちょっと切なくていい話だったが、こちらは切なくもなんともない与太話になっている。
さくらとのアルバイト、それを監視している時子、その周りで色々と事件が起きて、ラスボスはクラクルという軸は決まっていたので、他に誰を出して何を起こすかを考えていった。
「誰」については、まず新しい水着キャラはとにかく出すことにした。
クラクル、時子、エレーナ、レーベ・サフリーの4人だ。
さらに、プレイアブルになっているが、まだイベントに登場していない水着キャラも登場させると決めた。
制作時期が同じくらいだったため、水着イベント第一弾のキャラは被らないように除外することにして、アイナ・ウィンチェスターは『危ないサマービーチ』で出ているのでこれも除き、残っているのはイングリッド 、ドナ・バロウズ、由利翡翠の3人だった。
水着キャラ総勢7人。
おっと、さくらも水着になるから8人。これは豪華だ。
後は適当にキャラを組み合わせて、話を作っていくだけだ。
まずは、米連繋がりでドナ・バロウズとレーベ・サフリー。
ドナは『勇者(エインフェリア)の憂鬱』でふうま君ともう会っているので、新キャラのレーベとの仲立ちを頼むことにする。知り合いがいると話が早い。
ドナとレーベのペアについては、ドナは生真面目、レーベは戦闘狂と性格は全く違うが、二人とも兵士として己を高めようとしている点が共通しているので、気の合う者同士として登場してもらった。偶然だが、二人とも水着なのに武器を持っているので見た目も揃っている。
だから、この二人が出てくる時の敵は、己を高めようとしていない米連のバカ兵士になった。
鬼神乙女イベントからの流れで、ドナにはその後のことや、アスカへのバレンタインのお返しについて話してもらった。
先のエピローグでは、ふうまのお返しに文句を言おうとしていたアスカだが、実はドナには自慢していたり、その箱まで大切にとっているのがバレている。
そういうアスカは可愛いと思うが、もうちょっと素直になった方がいいと思う。
この二人だけで海に泳ぎにくるという状況はちょっと考えられなかったので、ノマドの慰安旅行で来ているということにした。
『魔界騎士と次元の悪魔』で、ノマドの少なくともイングリッド組はそんなことをしてもおかしくなさそうなフレンドリーな軍団に描いておいたのが役に立った。
もっとも、連中がどうやって海に来たのかは気になるところだ。
みんなで電車に乗ったのか、誰かが運転するマイクロバスでも使ったのか、どっちにしても妙な絵面だ。
そのせいか今回、イングリッドも妙に気が抜けた感じで、生徒同士の旅行になぜかついてきている先生のようになってしまった。
エレーナをどう扱うかだが、コミカルイベントだし、敵としてふうま君やさくらと直に戦うような展開は避けたかった。
ただ、海で偶然に出会って、そこに誰かが絡んできて共闘というのはドナとレーベでやったばかりだ。それとは違う形にしたいところだ。
そこで、エレーナは魔界で仲間と逸れていたのをノマドに救われたという過去から、一人ぼっちになるのを恐れているという設定を使った。
ちょうど羊の浮き輪を持っている絵だったので、海でプカプカ遊んでいたら流されてしまい、気がついたら一人でパニックになって、つい召喚魔法を使ってしまったという流れになった。
モンスターが現れた原因ではあるが、敵にはならない、むしろ助ける相手という落とし所だ。
もっとも、せっかくSDキャラがあるので、三番目の相手として戦闘場面には出てもらっている。
エレーナが呼び出すモンスターは、使い回しの雑魚であれば何でもよかったのだが、今回どこかで海らしい敵を出したかったので、異次元クラゲ事件で接点のあった魚とイカを使うことにした。
それでさらにパニックに陥るエレーナを助けるのが、やはり異次元クラゲ事件で出会ったキャラ、つまりさくらだ。若い方だが。
一人ぼっちでいるところに見覚えのある人が現れれば、エレーナが思わず泣きついてもおかしくない。
イベントの蓄積があると、本当に話が作りやすい。
エレーナを助けた後、ふうま君とさくらとで仲間のところに連れていくことになるわけだが、ノマドのみんなで来ていることにしたので、イングリッド先生の他に誰か出したくなった。
引きこもりのドロレスは海になど来ないだろうし、ここはやはりリーナの出番だ。
しかし水着がない。
私服っぽいのは、【a.k.a 嵐騎】リーナのみだ。
これは、すーぱーそに子コラボ『そに子、対魔忍になりまうs♪』の時に使わなかった素材だ。つまりイベント初登場となる。
なんという幸運、フレーバーセリフでラップがどうのこうのと言ってるから、浜辺のラップ大会にでも出てることにするか。
なんて軽く考えたのが運の尽き。おかげでえらい目にあった。その話は後ほど。
一方、ふうま君とさくらが色々とトラブルに巻き込まれている後ろで、その二人を監視していた時子もナンパ男に絡まれている。
監視に夢中の時子が無意識にナンパ男を倒していたからという理由だが、そいつらにどんな絵を使うかが悩みどころだった。
ここも既存のモンスターを使い回すとして、水着イベント第一弾でタツヤ先輩という金髪、日焼け、サングラスのいかにもなナンパ男が出てきたので、それと同じような見た目にはしたくない。
お馴染みのチンピラでも使うか、でももう少し面白い素材がないかなと探していたら、『対魔忍アサギ~決戦アリーナ~』に【南の島】忍熊という、忍熊が麦わら帽子とアロハを付けているという愉快なキャラがいた。これはいい。
そこで似たような感じで、オークみたいなナンパ男、トロールみたいなナンパ男と差分キャラを作ってもらった。
この差分三人組も含め、シナリオ中ではナンパ男たちに対して、忍熊、オーク、トロールといった言葉は一度も使っていない。そこは気を使った。
元になった忍熊のクマオも「浜で一番毛深い男」と自慢するだけだ。
もっとも、人間とも言及していないが。
クラクルは毎回のセクションでちょこちょこ登場していて、ラストで大きく絡ませるつもりなので、ここで翡翠とのペアでは出せない。
しかし、翡翠はもともと一人でいることが多いという設定なので、一人で出しても全く問題ない。いやありがたい。
敵をどうするかだが、ドナとレーベは人間、エレーナは海の生き物、時子はモンスターみたいなナンパ男ときて、この後のクラクルは猫軍団と決めていたので、なんでもいいから違う見た目にしたかった。
翡翠の設定を見ると、森で野鳥と戯れるのが好きとある。イベント初登場なのでもちろんこのネタは使ってない。
じゃあヒッチコックの「鳥」みたいにバサバサ出そうかと思ったら、肝心の鳥素材がない。
それっぽいものと言えばハーピーだけだ。
というわけで、怪しい鳥笛でハーピー大襲来という展開となった。
ラストはクラクルの出番だ。
最初はライフセーバーのバイトとして、ビーチの平和を守るため、ふうま君たちの前に立ち塞がるだけだった。
それがドタバタの締めということで、猫仲間のカノンとメルシーが助っ人に現れ、『鋼鉄の魔女アンネローゼ』からの流用で猫又もやってきて、時子とナンパ男たちも乱入し、戦闘画面では戦うがストーリー上はふうま君たちそっちのけで大乱闘になるというオチに決まった。
こんな感じで、使える水着キャラを全部出すという素材先行のコンセプトで始めたが、今までの蓄積やら、たまたまのキャラ設定やらを使ってなんとか一つの流れにしている。
ただ、色んな水着キャラが次から次へと出てきてドタバタするだけだと物足りないので、もう一本軸を作ることにした。
それがふうま君とさくらの仲の良い光景だ。
海の家で一緒に働いているシーンから始まって、タイマファイブごっこでふざけあったり、イングリッドの水着を喜ぶふうま君にプンスカしたり、ケバブを食べ歩きしたりと、ごく自然に仲良くしている。
時子が「二人だけにしたら過ちがあるのでは?」と不安になるのも無理はない。
このあたりのイチャイチャ、半分くらいはプロットで決めていたが、後の半分はシナリオの時に即興で書いた。
先日、"「ゲームシナリオライターはプロットをガチガチに指定されているから自由に書けない」のは本当か? - Togetter”という記事がちょっと話題になり、私もレスを入れたが、このさくらとのやりとりのように本筋にあまり関係ない部分はシナリオで自由に書きやすい。
プロットで脇の話を細かく書きすぎると本筋の流れが見えにくくなるので、プロットではわざとさらっと書いておいてシナリオで詳しく書くこともあるし、プロットのちょっとした一文をシナリオの時にアドリブで膨らませることもある。
例えば食べ歩きの場面、プロットでは「そのへんの屋台で串焼きなど買って囓りながら帰る」としか決めていなかったのだが、楽しいやりとりになりそうだったので、そこまで書いてきたノリでシナリオにした。
もともと私は食事のシーンが好きで、なにを食べるか、どう食べるかでそのキャラらしさが出せると思っている。
対魔忍RPGでも、稲毛屋のアイスをはじめとして、おにぎり*1、おはぎ*2、ハンバーガー*3と色々出してきたし、以前このブログで公開した七瀬舞のSSでもホットケーキを食べている。
ここでも、さくらから一口ちょうだいと言いだし、ふうま君の食べかけを普通に齧り、お返しにふうま君も食べさせてもらい、もうそれでいちいち間接キスだの言い出したりしない今の二人の関係がいい感じで描けたと思う。
ちなみに、蛇子だったらやっぱり気にしないが内心ではちょっと喜び、ゆきかぜだったら食べる前に一言文句を言い、きららだったら「そんなの気にしないのが大人の女」と無理をして後で赤面し、アスカだったら食べてから「私と間接キスできて嬉しい?」と回りくどくアピールするといった反応になるだろうか。
最後に、リーナのラップについて述べておこう。
今回、水着キャラがメインなので、リーナはチョイ役、エレーナをイングリッドのところに連れていったら、ちょうどラップ大会で鐘一つになっていたという展開だ。
だから、それっぽいフレーズが一言二言あればいいかくらいに考えていた。
ところが、あらすじを見てもらったところ、「ラップを収録して流しましょう」という反応がきた。
えらいことになった。
収録するからには、一言二言ではどうしようもない。ある程度の量がなければダメだ。
ラップなど今まで作ったことはないが、自分から振ったのでやるしかない。
YouTubeでラップを探して聞いてみたり、歌詞の作り方のABCを調べたり、泥縄で夏のビーチっぽいラップを一つ二つ作ってみた。
しかし、どうもしっくりこない。
多分、下手くそなラップになっているのだろうが、それはリーナが作ったということでいいとして、全体的にちっともリーナっぽくない。なにか違う。
さあて困った。
「リーナっぽいラップ」がなんなのか分からない。
どうしようかと考えながら、そのころ気分転換に最初から見直していた『勇者王ガオガイガー』をぼんやり眺めていたら、「ガガガ・ガガガ・ガオガイガー!」とオープニングで連呼していた。
あ、そうか、これでいけばいいんだ。
リーナに魔界騎士である自分のことを歌わせればいい。
どんなラップになろうが、それは間違いなくリーナらしい。
今までのフレーバーから聴き慣れたセリフを持ってきて、必殺技も連呼して、強引だろうがなんだろうが無理やりラップぽく繋げてみよう。
てな感じで生まれたのが、この『魔界騎士だぜヘイチェッケラ!』だ。
ヨー、魔界騎士、ヤバイ意思
嵐騎のパッション、本気のアクション
たぎる衝動、唸る戦場
どんな敵でもイェイ上等
とくと拝みな、桜嵐舞闘(ろうらんぶとう)
バシュッと鞘走るサウザントバニッシュ
ステルス暗ますブロッサムステップ
ひらりひらり躱してチェリーフラーリィ
やつらにカマすぜサクラにアラシ
今の限界
越えてオーライ
無理なんてない
飛べフライハイ
イェイ華麗に、イェイ軽やかに
サクラブロッサムで道を開く
魔界騎士だぜヘイチェケラ
みなさん困惑されてらっしゃるかと存じます。大丈夫です、私も困惑してます!!!
— 烏丸そら (@yaya_snowcat) July 15, 2020
というわけで「対魔忍RPG」にて本日より開催のイベント「怒れる猫と水着のお姉さま」にリーナちゃんが出てきます。皆さんが笑顔になってくださったら嬉しいです✨ pic.twitter.com/niWrnQlr9x
こんな妙なものを歌ってくれたリーナ役の烏丸そらさんには本当に感謝している。
リーナにもイベント中で全部歌わせてあげられなくて悪いことをしたので、この後日談でフェンリルと一緒に思い切り歌ってもらった。
ということで、今回はこの辺で。