対魔忍RPG 『コーデリアのふたり姫』 制作雑感

メインクエスト27章「コーデリアのふたり姫」はlilithのゲーム「監獄戦艦2」を元にしたイベントだ。
発売は2010年。その時はメインでシナリオを書いている。その縁で今回の担当になったのだろう。
お題は、ふうま君が監獄戦艦2の世界に行って色々あって、戻って来たら夢か現実か分からなかったということで、その色々の部分を考えさせてもらった。
ヒロインのマヤとアリシアは『対魔忍アサギ 決戦アリーナ』にもゲスト出演していたが、その時は担当していないので、さすがにどんなキャラだか忘れていた。
そこでまずは昔の資料や自分が書いたシナリオを読み返すことになった。

 

ところがゲームでは、最初こそ宇宙戦闘シーンがあったりするものの、それが終わればもう調教シーンで、そこでは「このケダモノ!」のように主人公*1を罵倒するか、「んほおおお!!」とアヘ顔を晒すのが主な仕事で、それ以外の日常でなにをやってるのかまるで分からない。おまけに二人とも洗脳的なことを受けているので、もはや日常どころではない。

しょうがないので、今回のイベントは時系列的に監獄戦艦2より前だというのをいいことに、基本的な性格や口調はなぞりつつ、それ以外は10年越しの後出しでどんどん決めていった。マヤの虫嫌いとかその典型だ。

 

ふうま君が監獄戦艦ワールドに行く理由は、リリムのイタズラ、ブレインフレーヤーの仕業、ジュノの嫌がらせとなんでもよかったのだが、話はマヤにキスされてお別れといった風に綺麗にまとめたかった。
要するに、長編アニメの劇場版やゲーム版なんかでよくある、結構な事件のわりに本編にたいして影響しない一夏の思い出的なお話だ。
例は山ほどあるが、パソコンゲームの『サイレントメビウス』で、プレイヤーキャラの考古学者が本編ヒロインの香津美とちょいといい関係になって最後にキスしてお別れしたり、セガサターンの『新世紀エヴァンゲリオン 2nd Impression』で黒髪メガネで大人しい系という狙いすぎなゲストヒロインの山岸マユミとシンジがちょいといい関係になって、こっちはキスしたかどうか忘れたが、やっぱり最後にお別れするみたいなやつだ。両方とも古いな。

 

ともかく、ふうま君にとって新しい世界、新しいキャラときて、このイベントだけでヒロインといい関係になるためには、「なんだこの世界は? どうやったら元の世界に戻れるんだ?」とかやってる暇はないので、最初から仮想世界のつもりで行ってもらうことにした。
戻ってから、「もしかして仮想世界じゃなかったのか?」と気づくパターンだ。
ギャルゲー的お約束イベントが連発するのも、ふうま君にこれは現実ではないと思ってもらうためだ。あと私が書きやすいからね。

 

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てなわけで、対魔忍バーチャルシミュレーションシステム、通称TVSSといういかがわしい装置を動かすところからお話は始まる。
ゆきかぜが用もないのについてきて、シナリオではゲーム好きだからと説明していたが、メタ的に言えば声がマヤのひむろゆりさんと同じだからだ。
そのわりに、最後に目を覚ましたときに、
 「ふうま! ふうまってば!」
 「うう……姫様……」
 「だ、誰が姫様よ、あんた寝ぼけてんの!?」
 「なんだ……ゆきかぜか……」
みたいなシーンを入れ忘れていた。

 

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TVSSをスタートさせると、いきなりマヤとアリシアの前にいる。まさにゲームのオープニング、それもドラクエとかのレトロなやつだ。
お約束通り、初対面ではマヤに気にいられず、彼女の使い魔、じゃない従者にさせられて、そのまま貴族学校までついて行く。この貴族学校も元のゲームにはない。

10年も前のゲームだし、プレイしていないユーザーも多いだろうから、まずは近代史の授業という名目で世界観を説明している。このあたりは元のゲームからのコピペだ。
必要な説明だがあまり長いと退屈なので、装甲機というロボットの説明はマヤにやってもらった。
ついでに、マヤは授業にも積極的に参加する優等生だが、アリシアのことになるとちょっと暴走しがちで、そのあたりも好意的に受け止められていることも示しておく。

やはり親しみを持てる姫さまの方がいい。

 

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それが終わったら、お約束の嫌味な貴族の登場だ。
いくらシミュレーションのつもりとはいえ、イキっているふうま君がちょっと恥ずかしい。なので嫌味貴族をあっさり蹴散らし、調子に乗ったところをマヤにビシッと叱ってもらった。
ここでのマヤは、絡んできた貴族を叱責し、それ以上にふうま君の見苦しい振る舞いを叱るという、誇り高い姫様の見本のようなキャラになっている。
その一方で、変わりものの平民がお姫様に気に入られるというのは、この手の話のパターンなので、ふうま君も1日でマヤの従者を首にならずに済む。
家に帰ったらアリシアに報告だ。
そうでもしないと、姫姉さまの出番が少なくなってしまうので、毎晩ちょこちょこ会話をさせている。

 

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2日目は虫イベントから始まる。
二人の距離をぐっと縮めるために、なにかお約束なラッキースケベをやりたかったのだが、新しいイベント絵は使えないし、元のゲームのものはエロすぎて使いまわせないので、使える素材からただ出るだけでもちょっと嬉しい下着の立ち絵をもってくることにした。
今までエロシーンはともかく、通常イベントで下着姿を披露したキャラはいなかったはずので、少しは特別感があるはずた。
実際にプレイして気づいたのだが、下着のマヤが出てきたとき、上の画像のようにメッセージウィンドウが絶妙の位置で邪魔していてパンティがちょうど見えない。

みんなウィンドウを消して見てくれただろうか。私は見た。
その一操作にちょっとしたイタズラ感があって面白かった。

 

学校日に行くと、また嫌味貴族たちと一悶着あるわけだが、ここでのバトルは戦闘シミュレーション中の出来事ということになっている。
ふうま君の格闘能力は昨日見せたので、今日は実戦仕込みの知略をマヤに披露したいのだが、本物の危機を出すにはまだ早いのでこのような形を取った。
エピソード自体は『銀河英雄伝説』で学生時代のヤンが首席のワイドボーンをシミュレーションで破ったあれが元ネタだ。
もっとも、ヤンは正攻法でないとはいえ、ちゃんとシミュレーション内だけで勝っているのに対して、ふうま君はハンニバルの「トラシメヌス湖畔の戦い」のように、待ち伏せして敵を隘路に引きずりこむ戦術を使ってはいるが、メインはシミュレーター外の猿芝居なので、それに付き合わされたマヤがむくれるのも無理はない。

 

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そのあたりをアリシアに報告すると大喜びされて、晩餐会に連れていかれる羽目になる。
アリシアのちゃんとした出番はこの晩餐会だけだ。
それほど長くないストーリー内でマヤとキスまでするためには、姫姉さまにはサポート役になって貰わざるを得なかった。ごめん。
ここでのアリシアは、多少強引で人を面倒ごとに引っ張り込むが、なにか楽しいことをやらかしてくれそうな魅了的な女帝として描いている。

まだまだ自分のことで精一杯のマヤと違って、晩餐会に慣れないふうま君へのフォローもしっかりしている。

イメージは、カエサルアントニウスを引き連れて先頭でガンガン戦クレオパトラといったところか。

ただ、今回はマヤの保護者としてのアリシア、王者としてのアリシアしか出せなかったので、そうやって普段は強い女をやっているアリシアが、気を許した相手だけふと見せる弱さ、その心の隙間につけこむ、おっと違った、心を慰めることで、マヤも知らない一人の女としての顔を描いてみたいものだ。そういう話は好きだ。

 

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ところで、晩餐会には脈絡なく怪しい奴が登場している。
ディノ・デイラッソこと監獄戦艦シリーズの主人公ドニ・ボーガンだ。ゲームでマヤやアリシアに色々するのはコイツだ。
包茎巨根の卑劣漢だが、ろくでなし軍団の信頼は厚く、目的のためなら自ら身体を張るダークヒーローでもある。あとよく肋骨を折る。
この立ち絵はゲームの使い回しのようで実は初登場だ。昔の素材に線画はあったものの、男キャラの悲しさで色がついてなかったので、10年越しで塗ってもらった。

いかにも胡散臭い調子で出てきたが、出てくるだけで特に何もしていない。マヤを襲った刺客たちを差し向けたわけでもない。単なる顔出しだ。
ふうま君が壁の花になっているときに誰かと話させたかったので、どうせならということで来てもらった。
場面のモチーフは、またしても『銀河英雄伝説』で、キルヒアイスがオーベルシュタインに初めて会うシーンだ。なので台詞回しも似せている。
「地球から来たばかりのテラ正教会助祭」と言っているのは、監獄戦艦2の時点ですでに大司教になっているので、このイベントがそれより前の出来事というのを示すためだ。
ちなみに、テラ正教会という名前は今回考えた。ゲームのシナリオを調べたら名前がなかったのだ。それくらい書いとけ、10年前の私。

 

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3日目はマヤとの楽しいデートと、ついに訪れる本当の危機だ。
ただ、デートに着ていくマヤの服がないのには困った。
ゲームの素材で使いまわせるのは、ずっと着てる姫様服、2日目に出てきた下着、あと素っ裸もあったが、さすがに初デートでヌーディストビーチはない。ゲームでは浜で露出プレイとかあったはずだが。
しょうがないので、一張羅のマント付きをそのまま使って、お忍びでそれは明らかにおかしいだろうという電車のシーンを入れた。
マヤは世間知らずという設定なので、みんなにジロジロ見られて、ようやく場違いだと気づく天然振りを発揮してもらっている。

 

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さてジュクハラ地区という、新宿だか原宿だかわからない繁華街につくと、まずは私の好きな食事シーン、それもお姫様と庶民の物を食べるという、お約束にも程がある場面になる。
マヤも言っているが、一緒に食事をするのはここが初めてにしたかったので、従者だから今まで食事は別にとっていたということにした。
真面目なマヤはちゃんとデート先の下調べをしているし、ハンバーガーの食べ方までチェックしている。
いくら世間知らずでもハンバーガーくらい食べたことあるだろうとかは言いっこなしだ。
アン王女はジェラートを食べ*2、ミネバ様はホットドックを食べ*3、マヤはハンバーガーを食べる。それでいいのだ。

 

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食後には刺客が現れる。
ふうま君からそれを聞いて、マヤはいきなり迎え撃つことを決める。姫様りりしいね。
ただ今回、パートナーがふうま君だからよかったが、そうでなかったらアヘ顔一直線だ。危ないところだった。
前座のチンピラは二人で蹴散らし、ラスボスは科学という指定で、ゲームのイベント絵を使い回して装甲機を出したかったので、それよりは小さいやつで、ふうま君が知恵と勇気でなんとかできる相手ということでパワードスーツにした。

作中で言ってる通り、あのダーマは達磨からきている。未来なので米連のやつとかより洗練されたデザインにしてくださいと頼んだら、三澤螢氏が見事に形にしてくれた。

似たようなずんぐりむっくりロボットで、『∀ガンダム』のスモーというネーミングセンスが好きなので、禅宗から「ゼン」という名前を考えたが、ちょっと分かりにくい気がしたので、ストレートにダーマにしておいた。

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ダーマとの一騎打ちは対魔忍ではちょっと珍しい、異能にまったく頼らない、目抜けのふうま君ならではの戦いだ。
異世界に来ても別にいつもより強くなったりせず、 たまたまやって来た工事現場のワイヤーや資材を利用し、SF武器のレーザーガンも借り物というあたりが、ふうま君らしくて気に入っている。これで日常品を使うようになれば冒険野郎マクガイバーだ。
そうそう、マヤのマントも役にやってくれた。立ち絵の差分にマントの”あり”と”なし”があったのでこの戦法を思いついた。デート用の私服がなくて正解だった。

 

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しかし、その工事現場クラッシュで倒せないのも当然の展開で、とどめはヒロインのマヤにさしてもらった。
その勝利の鍵になるのは、ふうま君と出会ったことによるマヤの成長だ。なんかハリウッド脚本術まんまな作りだが、そういうのが好きなのだ。
そして、ご褒美のキス。元の世界の連中と違ってえらく積極的だ。姫様やるね。
でも、そこで目が覚めてしまうのだった。

 

以上、今回のイベントについて色々と述べてきたが、昔のギャルゲーによくありそうな事件がやたらと起きている。
メインヒロインになってもらったマヤも元のゲームの性格をなぞっているとはいえ、書いてみたら古典的なツンデレお姫様だ。
そして気がついたら、ストーリーは異世界転生の基本中の基本『ゼロの使い魔』の1巻とそっくりになっていた。懐かしい気分になるはずだ。
 

さて、今度の五車祭でいよいよ二人が実装されることとなった。

いつものことだが、どんな戦闘アクションになったのかとても楽しみにしている。
アリシアの奥義”装甲機一斉射撃”は、その名の通り普通に装甲機が現れてドカドカ撃つのだろう。それは分かる。
気になるのはマヤの”サザンクロス”だ。

まず連想するのは『北斗の拳』でシンがユリアのために作った街の名だが、マヤの人形が出てきたりしたら嫌なので、ここは『キン肉マン』のクロスボンバー、友情のクロスラインのようなタッグ攻撃を考えたい。

フーマが颯爽と現れて、マヤと一緒に攻撃をしかけ、とどめに二人の斬撃が十字を描いたりするととても嬉しい。もうSDキャラもあることだし、彼との連携攻撃は今まで誰もやってないので、ちょっと期待している。

ついでに、ご褒美にマヤがキスしようとしたら、「誰よ、その女!」とゆきかぜを始めとした連中がワラワラ現れて、フーマがボロボロになるとかだったら最高だ。

後は二人を当てるだけだ。
ちなみに、今まで鹿之助、なお、舞などはどれも復刻までゲットできていない。ゼロレンジのアイナなどいまだに持っていない。

つまり経験上、キャラに思い入れがあると大抵残念なことになっているのだが、時すでに遅しだ。

 

※追記

なんとか二人ともゲットした。

*1:シリーズの主役ドニ・ボーガン

*2:ローマの休日

*3:機動戦士ガンダムUC