イベント「ファイヤー&ペーパー」が開始された。
一月ぶりの更新になるが、今回も制作時のことについて色々と思い返してみる。
作ったのは昨年末、結構最近だ。
例によってストーリーはお任せで、報酬キャラが眞田焔であること、イベント内で七瀬舞を登場させることだけが決まっていた。
眞田焔は対魔忍RPGではプレイアブルキャラとして三回目の登場だ。
レアリティRの眞田焔、HRの【稽古初め】眞田焔ときて、ついにSRの【槍炎の戦闘狂】眞田焔と順調に出世している。
そのわりに、これまでのイベントではあまり目立っていない。
今回の肩書きの通り、戦闘狂の困った対魔忍という噂話は色んな人がしているが、それで特に活躍するわけでもなく、それどころか蜘蛛の貴婦人に捕まっていたりと、良いところがまるでない。
しかし、同じく火遁使いの神村舞華には「姉御」と慕われていたりするので――そう書いたのは私なのだが――ともかく、戦闘狂だけではあんまりなので、もうちょっとまともな見せ場を作ってやることにした。
もう一人の七瀬舞は、決戦アリーナには出ていたが、対魔忍RPGにはまだプレイアブルにもなっていない新キャラだ。今までのことなど考えなくていいので書きやすい。
しかも、紙を自在に操る紙気使いで、なんでも燃やしたがる焔とはいい感じに相性が悪そうだ。
というわけで、サブタイトルは「ファイアー&ペーパー」とし、性格も属性も相反する二人が、任務を通して仲良くなるという、実によくある筋立てになっている。
その仲立ちするのが我らがふうま君だが、初登場の舞と絡ませるには、ストーリー上でも面識がない方がいい。
じゃあ、どこで会わせようかと考えて、紙使い――じゃない紙気使いなら、当然本好きだろうと、設定書にそんなことは全然書いてなかったのだが、R.O.Dの読子・リードマン的にそう決めて、図書館で偶然会うことにした。
最近まで知らなかったのだが、対魔忍RPGより早くアクション対魔忍に舞が登場したので、R.O.DはR.O.DでもTV版のアニタ・キングのように、紙は使うが本は嫌いとかいうキャラになっていたら、後発のこちらが矛盾してることになってやばかったのだが、好感度シナリオを確認したらそんなことはなかったので安心した。
ただ、アクションで舞が図書館はデート向きじゃないみたいなことを言ってるが、そんなことは全然ないと教えてあげたいところだ。
そういう意味では偶然はいえ、こっちのエピローグで焔と図書館に行かせていて良かったのだが、そうすると時系列的にRPGの後っぽいアクションとの矛盾がまた発生して―――まあいいか。気にしない気にしない。
ともかく、図書館で新キャラと出会うという導入は「忘れられた書斎」と同じだ。
シュヴァリエがらみの本の話というのも同じなので、家に帰るとさくらがいて、受け取ったシュヴァリエの手紙で呼び出され、向こうでまんまと罠にはまるという、前とそっくりの展開にわざとしている。
一つ違う点は、出発する前にふうま君のメンバー探しの場面が入るところだ。
RPGリプレイの第一回みたいでおかしいが、今まであまりやっていないだけで、いつもこんな風に任務にあわせてメンバーに声をかけているはずだ。呼んでもいないのに勝手に着いてくる人もいるが。
こんなシーンを挟んだのは、プロローグで舞の名前も分からないようにしたためと、焔も今までふうま君とあまり絡んでいなかったためだ。
舞は他に紙気使いがおらず、篠原まりと仲良しという設定があったので*1、その線から紹介してもらうとして、焔の出し方がちょっと難しかった。
火遁使いが必要になったとき、ふうま君がまず頭に浮かべるのは神村舞華のはずだ。今までのストーリーからすると、そうでないとおかしい。
それをさしおいて焔に登場してもらうためには、まず舞華に声をかけたが、駄目だったので焔になったという流れが自然だ。
自分が行けないので、姉御と信頼している焔を紹介するのであれば、舞華のキャラ的にも無理がなさそうだ。
というわけで、舞華には風邪をひいてもらった。ごめん。対魔忍だって風邪くらい引く。
時期的にコロナウイルスにやられたかと言われてるが偶然だ。きっとヨミハラで炎王の水流でも食らって身体が冷えたのだろう。
それにしても、すかさず風邪引き舞華の絵を上げてくれたSian氏には大感謝だ。枕が可愛いのが素晴らしい。
タイムリー過ぎるタイミングで思いっきり風邪をひく女・神村舞華 pic.twitter.com/rCsI49J4hg
— Sian (@sian_sasaland) 2020年1月31日
さて、シュヴァリエからの手紙には前回と同じくたちの悪い呪いがかかっている。
ふうま君とさくらも学習したようで、今回は呪いにかからずに済む。
ちなみに、仮に呪いにかかっていたとして、この二人が一人になったアンドロギュヌスとは、石井輝男の映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」*2に出てきた、男と女が背中同士でくっついているやつをイメージしている。
予告を見れば分かると思うがとてもヤバい。
だから、こんな呪いの話を聞いたら真っ先に手を出しそうな黒田巴にはやめておけと忠告しておく。
せっかく蓮魔先生と一つになっても、肝心のチンポは表と裏にあるので、お互いに咥えることも、入れることもできない。切ないだけだ。
もともと二つのものが一つになるのがいいのであって、最初から一つになっては意味がない。男と女とはそういうもんだ。男と女じゃないけど。
話を戻して、ヨミハラに出かけたふうま君と舞、今まで話したことはなくても、お互いに図書館で姿は見かけているので、読んでいる本の話でようやく盛り上がる。
ここで出てくる本のタイトルは、実在するものと、しないものが入り混じっている。
舞が昨日一日で読んだという本、これらは全て実在している。
私も全部持っているが、どれか一つ選べと言われたら、「時空の旅人」を推す。
あえてルビを振らなかったが「時空」は「じくう」ではなく「とき」と読む。
昨年末に亡くなられた眉村卓のジュブナイルだ。
そんなジャンルは聞いたことがない?
ライトノベルという言葉ができる前、スレイヤーズよりも、ロードス島戦記よりもさらに前に、少年少女向けにそういうジャンルがあったのだ。
アギノ・ジロという未来少年によって、生徒三人と教師一人がスクールバスごと過去に飛ばされてしまうというタイムトラベル物だ。
元々は「とらえられたスクールバス」というタイトルだったのだが、1686年に「火の鳥 鳳凰編」と一緒に劇場アニメ化するさいに改題されている。
当時から「時空」と書いて「とき」と読むのはダサいと思っていたし、今でもそう思っている。
もちろん私が持っているのは原題のほうだ。
次点として、初恋をあげておく。
同名の本は山ほどあるだろうが、ロシアの作家ツルゲーネフのものだ。
詳しい内容はあえて書かないが、思春期の女の子向けなタイトルとは裏腹にとんでもない話である。
「中学生のときに期待して読んだらすごいがっかりした」という知り合いの女性の言葉がとても印象に残っている。
それを聞いて私も読んだ。確かにすごかった。
それにしても、初恋といい、サランボーといい、オルメードの騎士といい、どれも恋が成就しない話だ。舞はそういうのが好きなのだろうか。たまたま昨日だけか?
一方、ふうま君が繰り返し読んでいるという忍術書、これはかなり嘘が混じっている。
とはいえ、元になる忍術書がないわけではない。
まず萬川集海(まんせんしゅうかい、ばんせんしゅうかい)という本は実在している。
これは江戸時代になって書かれたもので、伊賀と甲賀の忍術をまとめた集大成と言われていて、実際に忍術の基本書である。
例えば、夜襲のやり方についてはこんな感じだ。
この画像は現代語訳された完本からで、これを読めば対魔忍の世界がより深く分かる――なんてことはないだろうが、参考資料として私も持っている。
舞が正・続・続々と言っているのは、この萬川集海を正編として、さらに続編、続々編が書かれたという意味だが、ここが嘘だ。
対魔忍世界では現代に至るまで忍者が存在しているので、時代に合わせて新しいものが作られていったという含みを持たせている。
また井河国忍術秘法、甲河秘法口授之巻、この二つも実在しない。
だだし、読んだことはないが、伊賀国忍術秘法、芥子之秘法口授之巻というのはあるらしい。それっぽく字面を変えてみた。
こういうちょっとした嘘をでっちあげるのがシナリオ担当の楽しみだ。
舞が100回読んだというベルカメについては後ほど。
わかってる人はわかってると思うが。
ふうま君と舞が打ち解け始めたところで焔が現れる。
ここでの登場の仕方は、なんでも燃やしたがる困った人という、噂話で聞いた通りの描き方をしている。
そう見せておいて実は――というのがセオリーだからだ。すでに悪いイメージがあるなら使わないともったいない。
一方、舞は表には出さないが焔にかなりムカついている。
「私の紙は燃えません」とか、ぼそっと言ってたりして、大人しそうで頑なな部分が垣間見える。
シュヴァリエの館へ行くと、ドラウグル・オーガストが鹿之助と連絡していることが判明したり、シュヴァリエお得意の――というか単に私が好きで使ってるだけだが、シェイクスピアの引用で罵倒されたりする。二人とも今までに出てきたキャラなので実に動かしやすい。
引用元の「尺には尺を」は、婚前交渉が禁止された厳格な街で、恋人を孕ませた罪で死刑が決まった兄クローディオを助けるため、その健気な妹イザベラが奔走するお話だ。セックス禁止のルールを決めた領主代理アンジェロに兄を助けてくれと願ったところ、「じゃあ今夜、俺のベッドに来い」と持ちかけられ、この野郎言ってることとやってることが全然違うじゃねえかと困ったイザベラが、かつてアンジェロに捨てられた婚約者マリアナを自分の代わりにベッドに送り込んで罠にはめようとする。
とまあそんな喜劇だ。
YouTubeに短くまとめたラジオドラマがあるので興味があったら聞いてほしい。
エンディングは結構驚愕である。
シェイクスピア「尺には尺を‐Measure for Measure‐」(ラジオドラマ)
また、シュヴァリエのセリフのうち、この「馬には乗ってみよ、魔術にはかかってみよ」というのは、正しくは「馬に乗ってみよ、人には添うてみよ」ということわざで、彼女はそれをもじって使っている。
意味は「何事も自分で試してみないと分からない」といったところだ。
しかし、実のところ元のことわざとして私にとって馴染みがあるのはこちらの方だ。
必殺のキン肉バスターをバッファローマンに返されたキン肉マンが、あえてもう一度それを使おうとしているシーンで、このあと新(ネオ)キン肉バスターが炸裂する。
当時は元の言い回しなど知らなかったため、いまだにこっちが先に頭に浮かんでしまう。
そんなこんなで、ふうま君、焔、舞の三人はわざと魔術トラップにかかって本の中に閉じ込められ、紙の敵の大群が現れて、炎も使えなくなって、焔と舞はふうま君とはぐれてしまう。
ここからが今回のキモだ。
さっきは対魔忍として助けたが、嫌いな人とは別に話したくないという、まだまだ子供の舞に、焔が自分は好かれてないと知りつつ、頑張って話しかけている。
傍迷惑な戦闘狂と言われていて、実際にそういう面もあるのだろうが、ちゃんと相手を認めて、ぎこちなくも自分からコミニュケーションをとろうとするあたり、さすが姉御といったところだ。
電話一本で舞華の頼みを聞いたりしているし、基本的には後輩思いの人なのだろう。
もしかたら学校に模擬戦をしに来るのも、後輩を鍛えてやるつもりなのかもしれない。
それはそれで面倒くさい先輩だが。
ともかく、二人とも「ベルサイ湯の亀」、略してベルカメ好きということが判明して、一気に距離が近づく。
バックナンバーの話とかは、もはや単なる雑談である。ふうま君のことも忘れて盛り上がっている。困った連中だ。
ベルカメは読みたいが、国会図書館は自分の守備範囲ではないので、行くのをちょっと躊躇っている焔が可愛い。ここでは逆に舞が焔をリードしている。
ベルカメの元ネタはもちろん「ベルサイユのばら」と「ガラスの仮面」だ。
二つのタイトルを弄って合体させるとして、「ベルサイ湯」はすぐに決まったのだが、「仮面」をどうするかでふと思い出したのが、ドラえもんに出てきたこのパロディだ。
銭湯の名前で「亀の湯」は定番中の定番だし、「ベルサイ湯」と合わせても座りがいい。なので使わせてもらった。ありがとう、ドラえもん。
ちなみに、ガラスの仮面は実際に雑誌掲載時とコミックスとで内容がかなり違っていて、こんなところでネタにする以上、私も舞台を見に行く程度には好きなので、国会図書館まで読みにいったことがある。早く完結して欲しいのだが。
そして、ベルカメを通して仲良くなった二人の協力と、合流したふうま君の機転とで、ペーパーデーモンを倒す。
それまで本を燃やすのを嫌がっていた舞が、紙で作った鳳凰を燃やすのがポイントだ。
クライマックスの絵がないのが残念だが、アカシックバスターとか、カイザーフェニックスとかそれっぽいのを想像して欲しい。
私はもちろん科学忍法火の鳥だ。
いや、だってほら、これ対魔忍だし。
エピローグは焔と舞が二人で国会図書館に行くシーンだ。
ふうまにはタメ口でと言っていた焔が仲良くなった舞の口調はそのままにさせている。タメ口が苦手な舞を尊重しているのだ。
きっと焔も舞も普段の交友関係とは違う、趣味で繋がった特別な友達として、会うときはなんとなく二人だけで末長く付き合って行くのだろう。
舞に初めて神保町に連れて行ってもらった焔が、ボンディのじゃがいもを先に食べ過ぎて、肝心のカレーが入らなくなったりするところとか想像すると楽しい。
二人とも仲良くやってくれ。
では、今回はこのへんで。