対魔忍RPG 「奪われた石切兼光」 制作雑感

メインクエスト22章『奪われた石切兼光』が実装された。
主役は凜子先輩、ふうま君が全く出てこない完全な外伝イベントだ
最近、ふうま君が主役でないメインクエストが続いているが、別にその流れで作ったわけではなく、これはそもそもストック用に考えたイベントだからだ。

 

作ったのは去年の中頃。けっこう前のことだ。

メインクエストでいえば、18章『アミダハラ監獄』のシナリオを手掛けた後くらいで、これより後に書いた諸々のメインクエスト、そして『早く来い来いお正月』、『ファイアー&ペーパー』、『そに子、対魔忍になりまうs♪』などの担当イベントが先に実施されて、ようやく公開となった。

 

ストック用なのでなんでもいいからという依頼で、報酬はこのキャラだとか、脇役としてこのキャラを出すとか、そういう条件も一切なかったため、なんでもいいならと趣味全開で作ったらこんな話になった。

 

凜子が主役なのは『五車の夏休み』や『アミダハラ監獄』で戦闘の切り札として登場してはいたものの、それ以外では活躍の機会があまりなかったからだ。
次世代の対魔忍のエースと言われ、ゲームではゆきかぜとコンビを組んでいたのに、ふうま君と同学年ではないという理由からか、対魔忍RPGでは今ひとつ出番がない。
その一方で、対魔忍一の頭対魔忍とかAV女優とか散々な言われようで、その責任の一端は、対魔忍ユキカゼ1、2を書いた私にあるような気がしないでもないのだが、「凜子って馬鹿みたいだけど実はものすごく強いんですよ」と名誉挽回させてあげたくなった。

 

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私にとって凜子とは、ずばり対魔忍最強の剣士だ。
というわけで、凜子が扱う逸刀流にまつわる話になっている。
サブタイトルも『奪われた石切兼光』とした。
愛用の武器が使えなくなるのも、同門同士の争いというのも良くある展開なので、以前シナリオを手がけてキャラを良く知っている『鋼鉄の魔女アンネローゼ 』の連中をゲストとして出して彩りを添えている。
こういうことが出来るのも今までの蓄積のおかげだ。

 

今回、凜子の敵になるのは、強さを求めるあまりに逸刀流を破門になったかつての兄弟子、村雲源之助。そして源之助に付き従う女、陽炎。
二人の名前は、対魔忍シリーズの元ネタ中の元ネタともいえる山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』、それをアニメ化した『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』からもらっている。

 

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剣豪としての源之助のイメージは黒澤明の映画『椿三十郎』に出てくる三船敏郎だ。
妖刀「落椿村正」の名前もそこからとっている。
現実にはそんな刀は存在せず、椿の花がコトリと落ちるように一度抜いたら首を落とさずにはいられないという逸話は完全な創作だが、適当に作った割にはそれっぽくて気に入っている。

 

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陽炎は『甲賀忍法帖』の陽炎がそうであったように報われぬ恋に生きる哀しき女だ。
元の陽炎が、毒を使うために想い人とは決してセックスできない身体だったのに対し、こっちの陽炎はその逆で、想い人の病を癒すために「回春の術」というセックスの技を使うが、それで身体は満たされても心は決して満たされないという、完全に私の趣味のキャラになっている。
絵をどうするか最初は決めていなかったのだが、ありがたいことに新規にデザインしてもらった。幸薄そうな顔が実にいい。ポイントは泣き黒子だ。

 

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物語は石切兼光を研ぎに出すところから始まる。
研師の老人は、制作に少しだけ関わった『ネコノヒメ』から絵を借りている。
そちらでは空手の達人だったが、そういう求道者的な設定のせいか、使い回しの絵のわりにはイメージに合っていると思う。
リリス作品にこういう和服の爺さんはあまり出てこないか、出てきても立ち絵がなかったりするので、こんな絵があってラッキーだった。爺さんにとっては絵があったばかりに殺されてしまってアンラッキーなのだが。

 

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妖刀・落椿村正を受け取った帰り、凜子はさっそく刺客に襲われる。定番の展開だ。
この逸刀流同士のバトルはちょっと工夫を凝らしている。
いつもは「ザシュッッ!」とか適当な擬音ですませている剣戟を、相手がこうきたのでこう躱した、そしてこう切り返したという風に、剣と忍術を組み合わせた逸刀流ならではの戦いを少し詳しめに描写している。
というのもこの逸刀流、これまで名前だけはよく出てきていたが、その実態が今ひとつはっきりしていなかったからだ。
魔を滅するための対魔忍の剣術という、ぼんやりとした設定があるだけだった。

 

その使い手としては凜子を始めとして、今回も登場した獅子神自斎、酔えば酔うほど強くなる上月佐那、これを作ったときにはまだいなかった死々村孤路などがいる 。
しかし、そういったネームドキャラは逸刀流でも破格の強さで、それぞれ忍術もまるっきり違うので、ごく普通の逸刀流剣士がどんなものかよく分からなかった。

 

そこでオープニング直後の刺客として、普通の逸刀流剣士三人に登場してもらった。
それぞれ対魔忍としては一般的な風遁、土遁、火遁の使い手で、凜子にはあっさりやられたが、大抵のモブ対魔忍よりは強いはずだ。
その戦闘スタイルは炎をぶつけたり、かまいたちを放ったりと、忍術を単体の大技として使うのではなく、基本は剣術で、要所要所で地味に忍術を使って、確実に敵を倒すというものだ。
あるいは逸刀流とは、もともとの忍術の素質が劣っている対魔忍がそれでも一線級の戦闘力を得るために編み出されたものかもしれないと、浦波、炎蛇、地走りといった地味めの技も考えてみた。
剣だけと思わせておいてこっそり忍術を使うという、ある意味卑怯なやり方は弱い者が必死に工夫した成果といえる。
その極地が触れたものは何でも切れるという、地味だが反則以外の何者でもない凜子の胡蝶獄門という訳だ。

 

一方、三人の刺客の後に現れる村雲源之助はいきなり衝撃波を飛ばしてきて、ネームドキャラに相応しい破格の逸刀流剣士であることをまず示している。
凜子が柔とすれば、源之助は剛だ。
正面から全てを斬り伏せる剣で、病気でなかったら凜子と互角くらいと考えていた。
源之助自身はもちろん自分が上だと思っていたわけだが、避けられるつもりの胡蝶獄門を避けそこねたことで、考えていた以上に弱くなっていることに気づき、魔術で身体を強くしてもらうというチート技に手を出すことになる。
その時点で逸刀流剣士としては負けているのだが、それに気づかない、あるいは気づかないフリをしているあたりが強さのみに執着した男の悲しさだろう。
凜子は逸刀流剣士として源之助と決着をつけることを決意し、五車の里には戻らずに、そのままアミダハラへと向かうことになる。

 

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次のシーンは、アサギと自斎の場面からだ。
殺された研師の斬り口から凜子が犯人だと疑われてしまう。
源之助に石切兼光を奪わせたのはこれが理由で、五車の里からも追われる展開にするためだ。これもよくある流れだろう。
最初は追手にゆきかぜなどを入れて、凜子との戦いになる展開、あるいは凜子がいったん五車に戻って拘束されて、決着をつけるために見張りを倒して出奔する展開なども考えたのだが、それをやると長くなるのと、いつものメンバーが出てくると逸刀流の話という感じがしなくなるのでやめておいた。

 

同じ理由で追手も逸刀流と決めて、これを作った時点では佐那と自斎がいたのだが、明るい酔いどれ剣士と、味方にも恐れられる神遁の術使いとでは、やはり後者の方が今回の雰囲気に合っていたので、そちらに決めた。
とはいえ、凜子と自斎が戦うという展開はもう考えていなかったので、アサギの命令だから行くが、追手としてではなく、ことの真相を確かめるつもりといった態度を自斎にとらせている。

 

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視点を凜子に戻すと、観光客に混じってアミダハラに潜入しているところだ。
ここで私服の絵が役に立った。
両手を合わせたフェミニンなポーズといい、良いところのお嬢さん風の凜子が可愛い。
まさに『【高嶺の花】秋山凜子』で、さすがの葵渚氏のデザインだ。

 

ここから『鋼鉄の魔女アンネローゼ』のキャラが続々と登場する。
まずは、キーパーソンでもあった音無美樹だ。
セーラー服と機関銃』というもろに薬師丸ひろ子なデザインは単に私の趣味だ。
アンネローゼ当時の設定書を読むと、イメージキャラは『BLOOD+』の小夜とあったが、そんな面影はどこにもない。実際に作ったら違ってしまうのはよくある話だ。
ゲームでは行方不明の兄を探しにアミダハラにやってきたものの、その兄はすでに怪物にされ、美樹本人も実は人造人間だったというのが分かるのだが、対魔忍RPGでどうするかは今のところ未定だ。とりあえず異世界同位体には違いない。

 

その後、いつもの武装難民に襲われる。アミダハラではもはやお約束だ。
ここでの戦闘、最初は凜子が空間転移の泡をポコポコ投げつけて、Gセルフフォトン・トルピートのように武装難民を景気良く消滅させていたのだが、空遁の術が便利すぎるとのことで今のような形になった。
この技、『対魔忍ユキカゼ2』で使っていた夢幻泡影なのだが、こっちの凜子はまだそこまで使えないのかなと思っていたら、アクション対魔忍では普通に使っていた。しかもドラム缶や隕石まで落としていた。そんなドリフみたいなキャラではないのだが。

それはともかく、最初の案だと自分よりはるかに弱い相手をポコポコ虐殺しているだけなので、空遁で弾を防いでいたら敵が怯えて逃げていった今の方がスマートだろう。

 

武装難民たちとの闘いが終わると、一方その頃という感じで、源之助と陽炎の話になる。
今回のイベント、この二人のいずれかが全てのチャプターで登場していて、そこで語られる内容はユーザーには伝えられるが、凜子は最後まで知り得ないことも多く含まれていて、そういう意味ではもう一方の主役といえる。


この場面、苦しむ源之助に対して、陽炎がなにかをしようとして止められるが、「回春」という怪しげな言葉だけで具体的には語っていない。
ばらしてしまうと病身の相手と自ら交わることで子宮内で血肉の薬を生み出す「回春の術」を使おうとしていた。
源之助の「もう回春も効かぬ」というセリフは、今までそれで病気の進行を抑えてきたが、もはやそれも叶わないという意味だ。
ちなみに、回春の術の使いすぎで陽炎の子宮は変容を起こしていて、もはや通常の妊娠は望めないという酷い設定があるのだが、そのあたりも含めて説明しすぎると興醒めなのでぼんやり匂わせる程度にしている。

 

チャプターが進むと、アミダハラ観光ツアー的なパートが始まる。
これは『アミダハラ監獄』ではタイトル通り監獄に直行だったので、遅まきながら普通の街の様子を描写しておきたかったからだ。
朝から夫婦げんかでドンパチというのはアンネローゼ本編でもやっているネタだ。
凜子はすでに任務で来ているので、今さら街の様子に「へー」とか驚くのはよく考えたらおかしいのだが、アミダハラの住人である美樹に案内されているので、その時とはまた違った風景が見えているのだろう。

 

美樹の知り合いのゴロツキにナンパされたりした後、ようやくアンネローゼの事務所に行くが留守だ。
凜子を追ってきた自斎の方に行っていると後で分かるのだが、仮にそのネタを使わなくても、凜子とアンネローゼはあまり絡ませなかっただろう。
アサギと同じで、ゲームの主役をはるだけに、アンネローゼは強すぎるし、目立ちすぎる。ここはチョイ役で我慢してもらいたい。

 

アンネローゼがいないので、二人はアミダハラで一番の魔女であるノイのところに行く。
作ったのはこのイベントより後だが、先に実施された『早く来い来いお正月』でノイのことにちょっと触れたのは、いずれやるのを見越してのことだ。
AKIRA』のミヤコ様のようでも、『魔界都市<新宿>』のガレーン・ヌーレンブルクのようでもある、このおばあちゃんのフルネームはノイ・イーズレーン。

 

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と書いてなにかピンと来るのはキャラを作った私だけだろう。
実はノイおばあちゃん、私が『鋼鉄の魔女アンネローゼ』より前に手掛けた『彷徨う淫らなルナティクス~月の姫お伽草子~』に出てきたノイ本人だ。
作画は対魔忍RPGではナーサラちゃんを手掛けているSASAYUKi氏。とても可愛い。
 

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イーズレーンの名は同作の主人公とヒロインであった兄妹と同じで、その二人の名前をもらって、ずっと生きているというわけだ。
髪の色が同じなのはそのせいだが、この同一人物設定、アンネローゼ本編でも特に触れていないし、オフシャルでもなんでもない。
単にそういう複雑な過去があった方が、アンネローゼで老ノイのセリフを作りやすかったので、私がこっそりリンクさせていただけだ。でもいい機会なのでここに書いておく。
普段、魔力を押さえているノイおばあちゃんがその力を全開にすると、この若い頃の姿になったらとても嬉しい。

 

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源之助視点に移ると、アンネローゼ本編のラスボスであるバルド・バルドが登場する。ろくでもない魔術師役としてとても便利なキャラだ。
今回も源之助を興味本位で改造するのだが、先行して『忘れられた書斎』で初登場していたのがとても役に立った。

ストーリー上、源之助には人間をやめてもらいたいし、死に勝る苦しみにもがく源之助と、その傍らで祈る陽炎というシーンは入れたいが、実際にそれがどんな魔術によるものであるかは本筋とあまり関係ないのでくどくど書きたくない。
それっぽい魔術の呪文とかはいくらでも考えられるが、なにか違う気がする。
もっと分かりやすい形はないかと考えて、『忘れられた書斎』でバルドが作ったドラウグル・オーガストという、心臓がやたらと丈夫なガーディアンが出ていたのを思い出した。
似たような不死者の心臓を埋め込むというのはグロテスクで分かりやすい。そうしよう。
最初はドラウグル・オーガストの二号ということで同じ絵を使ったのだが、分かりにくいからかNGが出て現状の女の絵になった。
女に変わったのであまり深く考えずに、自分で心臓を取り出すときに性的な快感を抱いているように描写してみたが、報われぬ恋のために身を挺するという意味で、やってることは陽炎の回春の術と変わらないので、いい対比になっていると今気づいた。

 

源之助がどうなったかは明かさないまま凜子視点に戻ると、バルドからのメッセンジャーの使い魔がやってくる。
ここでの見せ場はもちろん、凜子が私服から一瞬で対魔忍スーツになる場面だ。
私服絵が作られたときから、いつかやりたいと思っていた。
ずっと下に着ていたのかとか、細かいことは言いっこなしだ。

 

血の決闘状が届いて、いよいよ阿弥陀城での決戦となる。
城について早々、お約束の武装難民が現れるが、もうこんな雑魚と戦っている暇はないので、アンネローゼが自斎を連れて登場して、連中はあっさりと逃げ出していく。
凜子とアンネローゼの会話は一言二言。
自斎も大方の事態を把握していて、すぐに凜子に合流する。
クライマックス直前なのだ。ガンガンいかないといけない。
とか言いつつ、残ったアンネローゼといきなり出てきたミチコとの会話になる。

 

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一応、モノローグで、アンネローゼと契約した悪魔云々と書いてあるが、アンネローゼ本編をプレイしていないと何のことやら分からないだろう。しかし本筋に関係ないので、それ以上細かいことは書かなかった。

このミチコは対魔忍RPGにおける魔族とは全く違う正真正銘の悪魔で、要するに異次元からきた存在であり、この姿も仮のものだ。
このイベントでの二人の役割は凜子には知られない形で、源之助が余命幾ばくもなかったということをユーザーに明かすことだ。
そのための掛け合いなのだが、こいつらのセリフは本当に書きやすくて、かなり久しぶりに書いたのに「らしい」言い回しがポンポンと出てきて楽しかった。

 

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源之助が待つ決闘場に向かう凜子の行く手を遮るように陽炎が現れる。
ここでもあえて多くは語らないが、魔性と化した源之助に陽炎は捨てられている。
源之助にもわずかに人間の心が残っていたのか、単に足手まといだからかは結局のところ分からない。

実は私も決めてない。そういうものだ。
同様に、ここに陽炎が現れた理由もはっきりとはさせていない。
源之助と凜子の戦いを止めたかったのか、源之助を殺さないように頼むつもりだったのか、叶わぬまでも一太刀浴びせて源之助の力になりたかったのか、とにかく来ずにはいられなかったというのが本当のところだろう。

 

ただ一つ、陽炎が激昂して斬りかかった理由ははっきりしている。嫉妬だ。
実はプロットでは陽炎はこれほど感情的にならずに凜子に戦いを挑んでいた。
しかし、ここまでシナリオを書いてきて二人の掛け合いを始めたら、陽炎にもっと悲壮なニュアンスが出てきた。
そして凜子が落椿村正を抜いたとたん、陽炎は一目で分かるよなと気づき、凜子は二人の事情など知らないので、石切兼光は源之助に奪われたと答えるし、そうなると陽炎は勝手に二人の強い結びつきを感じて嫉妬に狂うだろうと、今のような形になった次第だ。

自分でプロットを書いていても、こういうことはよくある。
単にプロットの作りが甘かったとも言えるが、実際にシナリオを書いているうちに、キャラに当初考えていたよりも複雑、あるいはより相応しい行動をさせてしまって、もはやその場面でプロット通りのキャラの感情では辻褄があわないというケースだ。
そういう時に限って、ヒロインが主人公に告白するとか、逆に別れを告げるとか、物語上で極めて重要な出来事をしでかしたりする。
それはプロット通りにやらないわけにはいかないので、 当初より複雑になってしまったキャラの気持ちをなんとかコントロールして、今までの展開から考えても無理のない形で、一見プロット通りになるようにシナリオにまとめるわけだ。
そのへんの予定外の苦労もライターの醍醐味ではある。まあ、最初にもっとよく考えておけって話なのだが。

 

今回はそれほどややこしくない。
捨てられてもなお慕う源之助のためにとやって来たら、自分にはない源之助との絆を凜子に見せられて、女の情念が爆発しただけだ。
ただそのせいで、陽炎はプロットではもうちょっと凜子とまともに戦えていたのに、シナリオではもうまるで戦いにならない。
陽炎の立ち位置を考えたら、その方がふさわしいだろう。気がついて良かった。
なお、陽炎の技「朧斬り」の元ネタは、『カムイ伝』の「変移抜刀霞斬り」、あるいはそれが元ネタの『ファイブスター物語』の「飛燕剣」だ。両方ともまだ完結してないのがやばい。
いずれにしろ、凜子と陽炎はサシでやりあって欲しかったので、雑魚の相手は自斎がしている。このためのギリギリでの合流だ。
しかも、この後の決闘には邪魔なので、陽炎の自害を防ぐためという名目で、自斎にはすぐ退場してもらった。ごめん。

 

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そして、凜子と源之助との決闘だ。
この戦いもいつもよりしっかりめに書いた。
源之助が破門されるきっかけとなった死霊傀儡の術。
傀儡ではなくそれを操る念糸を切る凜子。
魔性となった源之助の悪霊散弾。
それを凜子が空遁を使った九字護法で忍者らしく防ぐ。
などなど、二人のキャラを見せながら色々とやっている。
これらの攻防は全部シナリオ時に考えている。
オープニングの三人の刺客との戦いもそうだが、プロットでそんな細かいことまで考えていない。
面倒くさいし、そこまで決めたら、シナリオを書くときの楽しみがなくなってしまう。
それ以前にプロットであまり細かいことを書きすぎると全体構造が見えなくなる。

決めていたのは、源之助が強くはなっているが、その剣はさらに乱れてしまったこと。
源之助が落椿村正を奪うものの、凜子は動ぜず無刀で彼を仕留めるというラストだけだ。
バガボンドの超有名なセリフ「我が剣は天地とひとつ。故に剣は無くともよいのです」というアレだ。
それが剣への執着の果て、己の身を魔性にまでも変えてしまった源之助の結末に相応しい。

 

そして、源之助は最期に穏やかな心を取り戻して死んでいく。もうお約束だ。
石切兼光を凜子に返し、落椿村正を陽炎に渡してくれと頼む。
源之助なりの誠意なのだろうが、単なる呪いのアイテムである。つくづく陽炎がかわいそうになる。
一方で、源之助は凜子に対しても何かしらの想いがあったようなのだが、それは匂わすだけではっきり語らせてはいない。
このへんの元ネタはいくらでもあるのだが、ここは源之助の最後の技、二刀断己相殺剣の元ネタでもある『北斗の拳』から、妖星のユダがレイの腕の中で死んでいく場面をあげておく。

あのナルシストな性格はさておき、レイの強さと美しさに羨望と嫉妬を抱き続けていたという設定は実にいい。
源之助もきっとそうだったのだろうが、こちらでは肝心の凜子がAV女優でなくても、デフォルトで達郎LOVEな困った人なので、今回も達郎がいない方が話が綺麗にまとまるという結論になってしまう。
ますます達郎の行く末、というか存在の有無が案じられる。大丈夫か、達郎?

 

というわけで、とってつけたように達郎の心配をして、今回の記事を終えることにする。
ではまた。