老ヴォールの惑星 感想

老ヴォールの惑星老ヴォールの惑星
小川 一水

早川書房 2005-08-09
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やばい。ちょっと泣いてしまった。


氏の初めての短編。
表題作である『老ヴォールの惑星』を始め、計四編が収録されている。


『老ヴォールの惑星』
 高温高圧が支配するホット・ジュピター、サラーハに生息する珪素と金属で出来た生物が一族の存亡をかけて、多惑星との交流を目指す、センス・オブ・ワンダーに溢れたストーリー。


『ギャルナフカの迷宮』
 食料と水の位置だけを印された地図を持たされ、弱肉強食が支配する地下牢獄に放り込まれた男が、そこにいる囚人たちと新たな秩序と生活を築いていく。


『幸せになる箱庭』
 木星で発見された謎の建造物ビーズ、それによってもたらされる地球存亡の危険を回避するために、未知の知性体を求めて片道切符の旅に出た一行が、その旅の果てに見たものを描く。


『漂った男』
 陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術もなく、通信機による対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯。


特殊な生活空間、閉鎖環境が全体のテーマになっているのだろうか。
四作ともそれぞれぐっと来たが、特にラストの「漂った男」が良かった。
昔から、この手の漂流物は好きなのだが、これはいわゆるバディ(相棒)物の範疇にも入っている。バディ物大好き。
遭難し、大海原独りぼっちになった主人公と、彼と通信機だけを介して交流する相棒との話。実にいい。ダイ・ハードの第一作なんかもそうだな。


ゲームだと、PS2で「オペレーターズサイド」というのがあったな。宇宙ステーションでこっちが通信室に閉じこめられたという設定で、自由に動けるパートナー(女)へ実際にマイクで喋って指示を与える奴。
TVに向かって「撃って」「撃って」「避けて」とか喋ってる自分の姿は、人には見せられないが、あれは面白かった。
走っているパートナーに向かって、さらに「走って」って指示すると、「走ってるわよ!」って文句言ってきたり。