嘘つきは妹にしておく 清水 マリコ メディアファクトリー 2002-11 売り上げランキング : 76162 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ある日、主人公・ヨシユキのカバンの中に、見覚えのないものが入っていた。それは、ほとんどのページが真っ白な、おかしな本。「その本はね、あるお芝居の脚本なの」突然現れた女の子は、自らを「現実じゃないの。妖精かな」と言う。ヨシユキはその少女「みど」と共に、失われたページを持つ人々を捜すことに……。果たして、そこに描かれていた物語とは? そして、みどの正体とは?
絵買いしたラノベ。なんとなく一気読み。
ひと夏の淡く切ない想い出という感じで良かった。
異能力者も人類の敵もエキセントリックなキャラも出てこない、ラノベっぽくないこじんまりとした話。でも、そういうの好きだね。古臭い? なに、構うもんか。
作者の清水マリコ*1氏は読むのは初めてだったが、過剰な描写を抑えた実に趣味に合う文体で、イラストのtoi8氏の繊細なさし絵と相まってすーっと作品世界に入っていけた。
物語自体は、不思議な少女「みど」と共にバラバラになった本*2のページを探しつつ、主人公ヨシユキが今まで出会ったことのない人々と触れあっていく形で進行していく。
物語の登場人物が現実に出てくるとか、失われた物語を探すというのは、まあ良くあるシチュエーションだろう。
ただ、本作の場合、その本のページを手に入れるためには、「そのページを持っている人と心を通わせること」という条件があって、それが全体になんとなく照れくさい雰囲気を醸し出している。
その照れくささがいい。
タイトルにある通り「嘘」が重要なモチーフになっていて、エピローグの一ひねりも小気味良い。
同じモチーフ、同じ世界観で他に2冊出ているようだ。
ちょっと読みたくなったが、自分から探しにいってまとめて読むのは、作品が持っている雰囲気と少し違う。
ぼんやりと覚えておいて、いつかまたふと寄った本屋で見つけ、なんとなく手に取ってから読むと一番楽しめる。そんな気がする。
追記
好きな食事の場面で、とろけるチーズを乗せたトーストにマーマレードをちょっと塗って食べるところがあった。作中では「読んだ漫画の中にそういうシーンがあって試してみたら美味かったから」とあったが元ネタはあるのだろうか? ともあれ、ちょっと試してみたくはある。