対魔忍RPGショートストーリー『深月と六穂の“いつもの”』

「あっ、おかえりなさい」
 星乃深月がバスルームから出ると、ちょうど玄関の扉が開いて柳六穂が帰ってきたところだった。
「ただいま」
 対魔忍スーツの六穂は手に提げていたビニール袋をバスタオル一枚の深月に差し出した。
「はいお土産」
「なに?」
「魔界で取れる桃だって。桃好きだろ」
「わっ、嬉しいな。ありがとう。じゃ冷やしとくね。後で食べよ。任務は?」
「終わった」
 深月の問いに六穂はいつも通りぶっきらぼうに答える。
「お疲れ様。すぐご飯の準備するね。お風呂入ってきなよ」
「うん、今日なに?」
「素麺でいい? アサギ先生から凄くいいのもらっちゃった。あとは豚の冷しゃぶとかかな」
「なら、前にやったあったかい汁で食べる奴がいい。あれ好き」
「豚とか茄子とか入れた奴?」
「それ」
「オッケー」
 深月は頷き、裸足でぺたぺたとリビングに行き、お土産の桃を冷蔵庫にしまってから、服を着るために自室に向かった。
 深月にお土産を渡して手ぶらになった六穂は入れ替わるようにバスルームに入っていった。

 二人がこの2LDKのマンションでルームシェアするようになってから半年ほどが経つ。
 五車学園ではクラスメートだった深月と六穂だが、その頃から今のように親しかったわけではない。むしろ互いの接点は少なかった。
 まず深月は生まれつきの対魔忍ではない。外部でスカウトされて五車町にやってきた。
 それが真面目さと日々の努力、人当たりの良さで、卒業年次にはクラス委員長を務めるほどになった優等生だ。
 一方、六穂は五車の名門毒使いの出身だ。
 幼少時より恐るべき才能の持ち主として知られていたが、血液が毒化しているという、同じ対魔忍からも忌避されがちな体質と、なにより本人が他人と接しようとしない、リア充死ね的な性格であったため、クラスでも孤立していることが多かった。
 深月はそんな六穂とも友達になろうとしていたが、彼女のそういう前向きさは六穂には煩わしかったようであり、戦闘訓練でペアを組んでもうまくはいかなかった。
 そんな二人の関係が変わったのは卒業後、とある任務でチームを組んでからのことだ、
 一人前の対魔忍として再会した深月と六穂は学生時代のぎこちなさが嘘のように馬が合い、見事任務を成功させた。
 その時に同行した恩師、上原燐の勧めもあって、二人はその後もコンビを組むことが多くなり、風と毒という忍法の相性の良さ、なにより互いに信じ合わなければ生きていけない実戦を通して、プライベートでも親密になっていった。
 ルームシェアしないかと誘ったのは深月の方からだ。
 学生の頃は五車学園の学生寮に、卒業後は独身寮に住んでいた深月がずっと実家暮らしだった六穂に声をかけたのである。
 いきなりの誘いに六穂は驚いていたが、「深月とならいいかな」と意外にもすんなり受け入れてくれた。
 無論、実際に一緒に暮らすようになってからは、食べ物の好みから始まって、生活の上での様々なこだわり、絶対に譲れない部分など、大小数えきれないほどの衝突があり、何度かは新しい友情が崩壊しかねないほどの大喧嘩になったのだが、最近ようやくお互いのペースが分かってきたところだった。

「さてと」
 Tシャツにショートパンツというラフな格好になった深月はエプロンをつけて台所に立った。
 まずは六穂がリクエストした素麺のあったかい漬け汁作りだ。
 たっぷりの生姜を微塵切りにして、胡麻油で炒めて、冷しゃぶにするつもりだった豚肉を加える。焼き色がついたら、茄子、しめじ、玉ねぎ、それから冷蔵庫に残っていた大根、人参、牛蒡なんかも適当に放り込む。だいたい火が通ったら、ザーッと水を入れて、お湯が沸いたら麺つゆで味付けする。そこで軽く味見。
「うん、美味しい」
 具沢山のあったかい漬け汁これで完成。
 深月は冷蔵庫を覗き込む。
「これ豆腐もう使っちゃわないとな」
 少し考えて、好物の納豆に刻んだキムチを混ぜて、二人分に分けた冷奴の上に載せた。二品目終わり。
「もう一品くらい欲しいよね」
「なんかやることある?」
 お風呂から上がってきた六穂が声をかけてきた。
 上下のラフなスウェット。もうノーブラなのは深月と同じだ。化粧もすっかり落としてすっぴんで、ロングヘアも洗いざらしをふわっと整えただけ。
 こうすると普段の毒使いらしい印象が薄れて、優しい雰囲気になる。
 うちでしか見ることのできないそんな六穂の姿を深月は気に入っている。
 ちなみに深月はうちとそとであまり印象が違わない。と自分では思っている。六穂はそんなことないと言うけれど。
「もう汁できてる」
 六穂はリクエストした漬け汁を見つけて、さっそく味見している。しかもいきなり肉だ。
「つまみ食いしないの。あとなんか欲しいものある? 冷蔵庫にヒジキの煮物とかトマトのマリネとかまだ残ってるけど」
 休みの日に作り置きしていた常備菜だ。二つともタッパーに入っている。
「あるなら食べる。あとピーマンとしらすの炒めたのとか欲しいな。ボクやるよ」
「じゃお願い。私、素麺茹でるね。二束でいい?」
「いいよ。なにそれ。すごい高そう」
 桐箱に入っている素麺を見て六穂が驚いている。いつもスーパーで買っているのとは大違いだ。
揖保乃糸の最高級品だって。私も楽しみ」
「ピーマン全部使っていい?」
「いいよ」
 六穂はピーマンをザクザク刻んでいる。そしてヘタも種もワタもおかまいなしに炒め始めた。わりと大雑把だ。
 その横で深月は鍋にたっぷり沸かしたお湯に素麺を放り込んで軽くほぐし、すぐに火を止めた。
「ぐつぐつ茹でないの?」
 菜箸でフライパンの中身を弄りながら不思議そうな顔をする六穂に深月は言った。
「うん。これで蓋して五分置いとくだけ。それでいいんだって。粘りがでるから絶対にゆがかない。こないだいつもの素麺で試してみたけど、つるんとして美味しかったよ」
「暑くなくていいね」
「そこすごく大事」
 深月は頷いて、素麺を冷やすための氷水の準備を始める。
 そうこうするうちに、六穂はピーマンにしらすを加えてまた炒め、酒と醤油でジューッと適当に味付けして料理を終えた。それをお皿に移しながら、
「他のも出しとく」
「ありがとう」
 深月は五分たって茹で上がった素麺を冷水に入れ、優しくしっかりぬめりをとる。それが美味しさの秘訣。
 終わったら素麺を二人分のお皿に食べやすいように指でくるっくるっと一口ごとに盛り分けて、はい出来上がり。
「おまたせ」
「こっちも出来た」
 リビングのテーブルには、大きめのお椀にたっぷり入れた具沢山のあったかい漬け汁、納豆キムチ冷奴、ピーマンとしらすのきんぴら、それと常備菜のヒジキの煮物とトマトのマリネが置かれている。飲み物は冷たい麦茶。では、いただきます。
「この素麺すっごい」
 いつもの素麺との違いに深月は目を丸くする。見た目からして別物だ。宝石みたいにキラキラしている。それに麺が細い。喉越しが最高でちゅるるんとあっという間に吸い込まれていく。
「美味しいね。スルスル入る」
 六穂もとても気持ちの良い音を立てて素麺を啜っている。
 キリリと冷えた素麺に熱々の漬け汁。冷たいのと熱いのが一緒につるんと口に入ってくる感じがなんとも言えない。大きめに切った豚肉とその脂をよく吸った茄子や他の野菜の味もひとしおだ。
「アサギ先生からの貰い物だっけ?」
「うんそう」
「学校の方はどうなの?」
 自分で炒めたピーマンを箸で摘みながら六穂が聞いた。
 深月は今、母校の五車学園で臨時講師として風遁の術の講義をしていた。
「んーー、なんとか上手くやれてるかなあってとこ。アサギ先生にはこのままちゃんと教師にならないかって言われたけどね」
「ふうん」
 風遁の術は元々、攻撃にも防御にも使い勝手がいい忍法だし、元優等生だけあって深月の術は基本に忠実で、かつその高い分析能力により実戦に即した応用力もある。生徒たちのいい手本になるだろう。
 と思っても、それを上手く口に出せないのが六穂だ。代わりにボソッと言った。
「やれば。深月向いてるよ、先生」
「ありがと」
 六穂らしい素っ気なさに深月は笑って、
「でも、もうちょっと二人で現場に出てたい気分かな。せっかく仲良くなったんだし」
「それならそれでいいけど」
 深月のストレートな言葉に六穂は照れ臭そうな顔をして、またつるつる素麺を啜り始めた。普段よりペースが速いのでもう自分の分がなくなりそうだ。
「もう一束茹でる?」
「食べる」
「私ももう一つくらいいけるかな」
 深月は席を立った。
 ところで、素麺というのはどれくらい食べたか分かりにくい食べ物だ。さっぱりしているからいくらでも入りそうな気がする。
 しかし調子に乗って食べていると、ある瞬間にドカンとくる。「ちょっとお腹が膨れてきたかな」という気がしたときにはもう遅い。感覚的にはそこでいきなり満腹感が襲ってくる。腹八分目とは素麺のためにあるような言葉だ。
「うう、ダメ。もう入らない。死にそう」
「食べ過ぎた」
「消化促進の毒とか薬とか作れない?」
「ないよそんなの。吐くのとかならともかく」
「今、吐くとか言うの止めて。私、危ないから」
「苦しい」
 三十分後、勢いでもう一束いって、他のおかずも全部平らげた二人は、仲良くリビングのソファでひっくり返っていた。

 時刻は夜の十二時。
 深月は自室にこもって今度の講義の準備をしていた。
 部屋は六畳間。テーブル、ベッド、タンス、ドレッサーなどはどれもシックでモノトーンなものを揃えている。
 小物や雑貨も綺麗に整頓されていて、落ち着いた雰囲気が深月の性格をよく表していた。
 一方、六穂はガーリーなインテリアを好んでいて、白とピンクを基調にした部屋に実家から運んできたアンティークを並べている。
 フリルのついたクッションやぬいぐるみもお姫様感に溢れているが、ふとキャビネットを覗くと物騒な毒薬がずらりと並んでいる。毒使いの六穂ならではだ。
「ふう」
 深月はノートパソコンのキーボードを打つ手を止めて一息ついた。もう少しでできそうだが、その前になにかちょっとお腹に入れたいところだ。さっきあんなに食べたのに。
 こんなことしてたら太っちゃうなあと思いつつ立ち上がると、ノックの音がした。
「深月、まだ起きてる?」
「うん、なに?」
「桃切ってきたけど食べる?」
「食べる食べる」
 はかったようなタイミングに嬉しくなって扉を開けると、六穂が桃の入った皿を両手に持っていた。ぷうんと甘い香りが深月の鼻をくすぐる。
「ボクも一緒にいい? 仕事の邪魔ならよすけど」
「平気。一息入れようと思ってたとこ」
「よかった」
 ローテーブルに向かい合って腰を下ろす。他に誰もいないので二人とも胡座だ。切ったばかりの桃がつやつやと光っている。
「いただきます」
 フォークを手に取ってパクリと口に含むと、とろけるような果肉とみずみずしい果汁がいっぱいに広がってくる。
 深月の口元が思わず緩み、唇から汁がぴゅっと出そうになって慌てて手で押さえた。
「うわあ、すごく美味しいねこれ」
「魔界って変な食べ物も多いけど、美味しいものは美味しいよね」
「うんうん」
 当たり前のことを二人で頷き合う。
「仕事忙しいの?」
「ちょっとね。今、地下演習場の模擬戦のプランを作ってたとこ。知らない敵とか多くて」
 深月はテーブルのノートパソコンを持ってきて六穂に見せた。
「ほんとだ。 ボクも全然知らないや」
 感染者にレイダーにハンター。どれも初めて見る敵だ。しかも生徒が戦うには厳しいだろうと思うほどの高スペックだ。 
 こんな敵を設定するやつは誰だろうと、データ作成者の名前を見てみると、
「やっぱりふうまだ」
「あはは。私もやっぱりって思った。ふうま君どこでこういう情報を仕入れてくるんだろうね」
「あいつの人脈の広さはちょっと異常だよ」
「おかしな戦闘経験とかもね。ほら神様とか」
「訳がわからないよ」
 桃を食べながら、お互い任務でわりと付き合いのある変わった後輩のことでひとしきり盛り上がる。
「じゃ、ボク先に寝るね。あんまりこん詰めないほうがいいよ。おやすみ」
「ありがとう。おやすみなさい」
 六穂は空になったお皿を持って部屋を出ていった。台所でそれを洗う音と、それから洗面台で歯を磨く音がして、すぐに静かになった。
 深月の仕事が終わったのはそれから一時間ほど後だ。もうリビングも暗くなっていた。
 音を立てないように歯磨きして、パジャマに着替えてベットに潜り込む。
 後はもう寝るだけ。
 けれど眼は冴えていた。気持ちもそわそわしている。
 今夜も予感があったのだ。きっと六穂が来るだろうと。
 果たして十分もしないうちに、ひたひたという足音がして、扉の前に立った六穂が躊躇いがちに声をかけてきた。
「あのさ、深月……」
「なあに?」
 こんな夜中に何の用か分かっていてわざと尋ねる。
 六穂の答えにはちょっと間があった。
「いつもの、して欲しい」
 深月は薄く笑った。
「おいで、六穂」
 自分でもびっくりするくらい艶っぽい声が出た。
 扉がゆっくりと開く。
 頬を上気させた六穂がそこに立っていた。

 二人の“いつもの”。
 それが始まったのはルームシェアして一月ほど経ったある夜のことだ。
 その日、六穂は一人で任務を行ってきた。
 毒使いの彼女にしばしば与えられる類の任務だ。けれど一緒に暮らすようになってからは初めてのはずだった。
 いつもは烏の行水の六穂がいつまで経ってもお風呂から出てこない。
 もしかしたら中でのぼせているのではないかと深月は心配して、バスルームの外から声をかけ、返事がないので扉を開けた。
 一緒に暮らし始めた当初は、二人ともお風呂の時は鍵をかけていだが、バスルームの中と外でなにかとやりとりすることもあり、すぐに面倒くさくなってやめていたのだ。
「な、なに?」
 六穂は驚いて深月を見た。声をかけたのも気づかなかったようだ。
 シャワーの勢いは最大。びっくりするほど肌が赤くなっている。何度も何度もスポンジを擦りつけて洗っていたようだ。
「どうしたの?」
「別に。大丈夫だよ」
 六穂は深月から目を逸らしながら言った。
「大丈夫って、こんなに赤くなってるじゃない」
 深月は自分が濡れるのもかまわずシャワーを止める。
「任務で何かあったの?」
「いつもと同じだよ」
 六穂は言った。ひどくぶっきらぼうな口調だった。
「ボクは身体を洗ってただけ。なんともないから早く出ていってよ」
 六穂は自分の身体を深月から隠すように手で覆った。震えていた。
「イヤなことされたの?」
「別に」
 六穂は俯いたまま。深月と目を合わせようとしない。
「六穂」
 深月は六穂の顔を下から覗き込んだ。
「……っ」
「ちゃんと私を見て」
 また目を逸らそうとする彼女の顔を両手で押さえて、無理矢理に目を合わせた。その瞳は不安げに揺れていた。
「どこ?」
「えっ?」
「どこがイヤなの?」
「ど、どこって……?」
「教えて。私が綺麗にしてあげる」
 自分でも思ってもみなかったような言葉が深月の口から出た。
 その勢いに押されるように、六穂は声を震わせて、右手で左肩のあたりを指差した。
「こことか……」
 深月は躊躇うことなく、そこに口づけした。
「ふあっ……み、深月!?」
 六穂の濡れた身体がひくんと震え、驚きと切なさが入り混じった吐息が漏れた。
「それから?」
「こ、ここも……」
 今度は左肩、でも少し胸に近い場所。深月はそこにもキスする。
「んんっ……」
「おっぱいも? 綺麗にして欲しい?」
 震える肌に舌を這わせながら上目遣いに尋ねる。
「う、うん……して」
「了解」
 深月は頷いて、左の乳房、右の乳房、もちろん二つの乳首も優しく優しく舐め回してあげる。敏感な乳房はすぐに張り詰め、赤い乳首がツンと尖っていった。
「あっ……ああっ……ふああンっ……ンンッ……ああっ」
 深月の愛撫がおっぱいからおへそ、さらにその下へと降りていくにつれ、六穂の身体がガクガクと震え始めた。
「うぅ……んっ、深月ぃ……」
 六穂はもう一人で立っていられない。切なそうに身体を前に折り曲げて、舌を小刻みに動かしながら腰を落としていく深月にしがみつく。
「も、もう……いいよっ……ボクっ、大丈夫……だからぁっ……」
 今日のターゲットに一番汚された場所、そして深月が一番綺麗にしてあげたい場所に唇が触れようとした寸前、六穂は今にも泣きそうな声で言った。
「ダメ。私がそうしたいの」
 深月は両手の親指でそこをゆっくり広げて、赤く開いた秘唇にそっとキスした。
「あっ、ああっ、ああぁーーーーーっ!!」
 深月が初めて聞く六穂の声がバスルームに響き渡った。

 それが二人の“はじめて”。
 もう今は“いつもの”。
 深月と六穂の秘密の、だけどあたりまえの行為。
「んっ……ああっ……くぅん……あっ……あっ……あああっ……」
 ベッドに仰向けに横たわった六穂の身体が切なそうに震える。
 深月は六穂の両足を広げ、そこに顔を埋めて、濡れそぼった花芯を舌で丁寧に舐め回していた。
 六穂の味と匂いをいっぱいに感じる。その素敵な感覚。
 もちろん二人とも全裸だ。お互いを隔てるものは何もない。全てを晒している。
 六穂が深月の部屋を訪ねてから、もう小一時間ほどが過ぎていた。
 その間ずっと深月は指で、舌で、言葉で、そして風を使って六穂の身体中を愛撫し続けている。 
 元来、色の薄い六穂の肌はどこもかしこも火照り、ナメクジが張ったような深月の唾液の跡でテラテラと光っていた。
 これで何回目の”いつもの”になるだろうか。
 もう最初の時のように、深月はどこを綺麗にして欲しいかなどとは聞かない。六穂も言わない。
 六穂はただ深月に全てを委ね、深月も自分の思うままに、ありったけの愛おしさを込めて六穂の心と体を慰めていく。
 深月自身の秘所には触れさえしていなかったが、もう洪水のように濡れそぼっている。
「あっくぅ……ああん、深月ぃ……そこ……そこぉ……」
「ここ、気持ちいいの?」
 深月は舌を尖らせ、唾液をたっぷりと乗せて、真ん丸に膨れた六穂の可愛いクリトリスを小刻みに跳ね上げた。
 ぴちゃぴちゃとことさら卑猥な音を鳴らしてあげると、六穂はヒクンヒクンと踊るように肢体をくねらせる。
「気持ち……イイ……ああ、イイよぉ……深月ぃ……」
「六穂、可愛い」
 任務での性経験は深月とは比較にならない六穂が今はただ甘えた声で彼女に身を任せている。それがたまらなく嬉しい。
 ぷっくりと膨れた秘唇はおねだりをするように左右に広がり、深月が舐めても舐めてもその奥からこんこんと蜜汁が湧き出てくる。
「あっンッ、ンンッ……深月ぃ……いつもの……して、してぇ……」
 やがて六穂の身体がぷるぷると小刻みに震え始めた。
 深月には分かる。いつものアレでイキたがっている。それを百も承知で焦らすように聞いた。
「いつもの? え? どうして欲しいの、六穂?」
「ああンッ……イジワルぅ……風でっ……ふああっ……風でイカせて……お願い……あっああっ、深月ぃ……おねがぁい!」
 六穂は目に涙すら浮かべながら深月に懇願してくる。
 きっとまだ自分しか知らない六穂のそんな愛らしい姿に、深月はそれだけで自分もイキそうになってしまう。
「いつものね。いいよ」
 深月は唇を細めてフーーッと息を吐き出した。もちろんただの息ではない。風遁の吐息だ。
 それは指よりも繊細に、舌よりも優しく六穂の膣口に当たって、膣道をゆっくりゆっくり押し広げていく。
「ひああっ、あああっ、ああああああああ!!」
 六穂の腰がククッと浮き上がり、喘ぎ声も一気に高まっていく。
 深月が放つとびきり柔らかい淫風で、六穂の膣はまるで見えない肉棒を挿入されたように広がっていく。
 奥に向かってネチャネチャと艶かしくうねる膣壁も、そこから蜜汁をじゅわっと溢れさせる肉皺の一つ一つも、一番奥でクパクパと物欲しげに息づく子宮口も、忍法で風を送る深月には手に取るように分かる。
「ふ~~~っ、ふ~~~~っ」
 深月は膣道をぱっくりと拡げたまま、一番敏感な子宮口をシュルシュルと撫で回してあげた。六穂が一番好きな風。一番イキたくなる風。
「ひあああっ! ああっ、ひゃあああっ! 深月ぃっ、ああダメぇ! ボクもうイクっ、イクぅ、イクぅううううううう!!!」
 六穂の甲高い絶頂の声が上がった。
 端から端までいっぱいに広がった膣襞からじゅわああっとアクメの蜜汁が溢れ出したが、それも風で膣口から出ることができずに中でグルグルと切なそうに渦を巻いている。
「あああーーーっ、ああーーーっ……くはあ……はあっ……ふはあっ……」
「うふふ」
 六穂のアクメの波がほどよく引くのを見計らって深月が淫風を止めると、ぱっくりと開いていた膣道がキュウッと一気に閉じた。それまで膣内で渦を巻いていた愛液が水鉄砲のように勢いよく溢れ出す。
「ああ……」
 深月はうっとりと目と閉じ、六穂のアクメ汁がビチャビチャと顔に当たるのを楽しんだ。
「こんなにいっぱい……素敵」
 そう呟いて目を開けると、今イッたばかりの六穂がとろんとした瞳で深月を見上げていた。
「はぁ、はぁ……深月ぃ……」
 乳首を硬くさせたままの乳房がまだ嵐の途中といった感じで大きく波打っている。足もだらしなく開いていて、その真ん中で秘唇が今もはしたなくヒクついていた。
 深月はまたそこに口づけしながら秘めやかな声で囁いた。
「まだ……してほしいよね?」
「うん……もっと、して……」
 六穂は甘えた声でねだってくる。こうやって二人でいるとき六穂は別人のように素直だ。
「じゃあ私も六穂に“いつもの”して欲しいな。ねえ、ちょうだい」
 深月は左右の手を使って割れ目をさらに拡げ、愛液がトロトロと流れ出てくる肉裾に舌をれろりとスプーンのように広げて置いた。
「ダメ……だよ……あれは……もう危ないから……」
 六穂は悩ましい顔つきになってイヤイヤをするように身をよじった。
「平気。私、六穂を信じてるから。それとももうして欲しくないの? 気持いいことやめていいの?」
 深月は舌をチロチロとくねらせながら意地悪く尋ねる。もちろん六穂は十秒と耐えられない。
「んぅっ……くぅ、いつも……そうだ、深月は……ボク、知らない……からぁ……ンンッ!」
 六穂はこれ以上ないくらい切なそうに眉をひそめた。
 その途端、深月の舌で感じる愛液の味と匂いがふっと変わった。
 身体が蕩けてしまいそうな、心が遠くなりそうな、とても蠱惑的で危険なこの感じ。
 六穂が深月の体質に合わせて、彼女のためだけに体内で調合してくれたとっておきの媚薬。
 ちょっと六穂が間違えれば深月を廃人にしかねない強力な薬。それが二人の想いの証。
「ああぁ、すごい……今日もすごい……六穂……感じる……感じるぅ……」
 深月の心臓が早鐘のように鳴り出し、全身に火が付いたように火照り始める。
 六穂を愛撫している間に蕩けていたオマンコからは堰を切ったかのように蜜汁が溢れ出す。
 もう六穂を優しく愛撫し続けるなんてできない。できるわけない。二人でもっともっと気持ちよくなりたい。いつものあのやり方で。
「六穂、あれ使うね、いつものあれ使うね」
 深月は手を伸ばして、今夜もちゃんと用意していた双頭ディルドーを強く握りしめた。
「うん使って。ボク、深月とまた一つになりたい、早く、早くぅ」
 六穂も指で自分の膣口をクパアッと拡げて挿入をせがむ。目眩しそうなほど可愛らしい。
「ま、待って……今……ンンッッ、私がぁ……入れる……からぁぁ……あっ、ああっ、ああああんんっっ!!」
 深月は膝立ちになって、双頭ディルドーの片方を埋め込んでいく。
 これもただのディルドーではない。
 予め二人の膣の形を型取りして作った張り型を二つあわせた特別製だ。
 当然、二つに張り出した棒はお互いに自分でも見ることができない膣の形そのもの。
 勃起したペニスを模した普通のディルドーと違って、二人とも羞恥でいたたまれなくなるような生々しい形をしている。
 今、深月が中に入れたのは自分のオマンコと同じ形をした方だ。
 濡れそぼった膣がぐちゅうとはしたない音を立てて張り型を咥え込むと、膣口から子宮口までの緩やかなカーブ、所々で少しずつ違っている膣内の太さ、そして複雑に走っている膣襞の一つ一つにまで、その形がピッタリと収まった。
「んあっ……ああ……っ」
 もう動かそうとしても容易に動かせない。
 異物を嵌め込んだというより、本来そこにあるべき物が戻ってきたような妖しい快感が背筋をゾワゾワと駆け上がる。
「深月ぃ、ボクもボクも、早くぅ入れさせてよぉ!」
 この快感を知っている六穂が今にも泣き出しそうな切ない目で訴えてくる。
「うん、早く来て、六穂」
 深月はお尻を落として、両手を後ろにつき、足を広げて膝を立てた。
 いわゆる貝合わせのためのポーズだ。けれど深月の股間からは六穂の膣とそっくり同じ形をしたディルドーがそびえたっている。深月から溢れ出た蜜汁でそれはヌラヌラとより一層卑猥に輝いていた。
  六穂は腰を浮かせて、自分の形の張り型を躊躇うことなく膣内に埋め込んでいく。
「んくぅっ……ひあっ、ああっ……くはっ……ああああっ!」
 どうしようもなく切なくて、それでいて満たされているような表情。
 きっとさっきの深月と同じ、そしてまだ彼女しか知らない六穂の顔。
 どこまでいっても異物感があって、それ故に感じてしまう男性器とは全く違う、文字通り自分自身の形で完璧に膣内が埋め尽くされいく快感。
 しかもそれは端と端で互いに繋がりあって、二人のオマンコが完全に一つになったような感じになる。もう深月は気が遠くなりそうだった。
 ディルドーを挿入した六穂は深月と同じように両手を後ろに突き、足を広げて貝合わせの姿勢をとった。一つに繋がったオマンコを挟んで、そっくり同じポーズでお互いの淫らな顔を見つめ合う。まるで鏡映しのように。
「ああ……六穂のオマンコすごい……いつもよりビクビクしてる……」
「深月だって……今日のオマンコはイヤらしすぎだよ……こんなに強くうねってる」
 はしたなく震えるオマンコの微細なうねりも、愛液をしとどに溢れさせる膣襞の艶かしい脈動も、子宮が降りてきて口を開いていく浅ましい動きも、二人を繋いだディルドーによって全て伝わってしまう。
 相手がどれだけ感じているのか分かる。自分がどれだけイヤらしくなっているのか知られてしまう。
 恥ずかしくて頭がどうにかなりそうなのに、それが嬉しい。
 もっと相手を知りたい。もっと自分を知ってほしい。
「深月……いつもの……」
「うん、いつもの……六穂……」
 二人は身体を起こして手と手を取り合い、指をギュッと絡ませて交互にオマンコに力を入れ始めた。
 深月から六穂へ、六穂から深月へ、女の子同士でシーソー遊びをするように膣内のディルドーをぎゅるっ、ぎゅるっと引っ張り合う。
「ひぁっ……あぁっ、やあん……深月がボクを引っ張ってるっ……オマンコ、外に抜けちゃうっ」
「あん、ダメぇ、六穂っ、そんなにっ、ああッ、強く引っ張らないでぇ!」
 繋がった二人のオマンコの中をディルドーが何度も行ったり来たりする。ピッタリとくっつけあった膣口から二人分の愛液がグチュグチュと混ざり合って溢れ出した。
「あんああぁあんっ! 深月ぃ、すごい、すごいよぉ!」
「六穂もぁ、ひあァ、やああン、すごいすごいすごい!」
 深月と六穂の喘ぎはどんどん大きくなっていく。
 オマンコの抜き差しも加速度的に激しくなる。もう二人とも止められない。止めたくない。
 だからいつものように、深月と六穂はお互いにすがりつくようにして抱き合う。
「ひああっ! あんあぁっ! 深月ぃっ、ボクイキそうっ! またすごくイキそう!」
「六穂わたしもっ、ああん! もうイキそうっ! イキそうっ! 一緒にいこうねっ! いつもみたいに一緒にっ、一緒ににいっ!」
 深月と六穂、絡み合う喘ぎが、抱き合った身体が、繋がったオマンコがやがて一つになって高らかに弾けた。
 二人とも同じように頭が真っ白になっていく。心と身体が溶けて混ざり合ってしまったかのように、心地よい余韻が二人を包み込んだ。
 けれど、二人の“いつもの”はまだ終わらない。
 今度はディルドーの向きを入れ換えて、相手のオマンコの形をありったけ感じながら、自分のオマンコの形で相手を慰めるのだ。
 そうやって繰り返し繰り返し、秘めやかな時を重ねていく。
 それが深月と六穂の“いつもの”。
 二人の日常。


(了)


【制作後記】
 もし深月と六穂がルームシェアしていたらという話だ。もちろん非公式のものである。
 今までこのサイトで公開してきた話は対魔忍RPGで実装されたイベントやユニットにちなんだ内容だったが、今回初めて単にこういう話を書きたくて書いてみた。
 無論、本編と全く無関係というわけではない。二人の仲がそれくらい良くなっているだろうという本編中の描写を踏まえてのものだ。
 本編における二人の絡みは『蜘蛛の貴婦人』まで遡る。
 ここでの二人の関係はかつてのクラスメートだ。戦闘訓練でペアを組んだこともあるが、今ひとつ上手くいかなかったという過去があった。
 二人が会うのは卒業以来で、深月は「柳さん」と呼び、六穂は学生時代と同じ「委員長」といった具合で、特に仲がいいわけではない元同級生といった描写をしている。
 これらの設定はシナリオ制作段階で考えたものだ。
 個々のキャラ設定では二人とも単に卒業生というだけだったので、話が作りやすいように同級生で昔からの知り合いということにしてみた。
 ちょうどこの少し前に、六穂がメインとなる初登場イベント『毒も過ぎれば薬となる』があり、そこで六穂がふうま君に心を開くという展開があった。
 ならば、六穂がその出来事を経て、今度はふうま君以外の人との関係がどうなるか描きたかったこともあり、クラスメートだが大して仲が良いわけではない深月の登場となった。
 このイベントで、深月は学生時代と同じようにフレンドリーに接しているが、もし『毒も過ぎれば薬となる』の経験がなかったら、六穂は「委員長はあいかわらず鬱陶しいな」で終わっていたはずだ。
 その後、本編中で二人が共に戦う機会はずっと後の『五車決戦』までないのだが、『バニー対魔忍とカジノ・ラビリンス』で二人がコンビで上手くやってることを言及したり、深月が六穂の人となりを他人に説明するのに普通に呼び捨てにしていたり、『幻影不知火』で二人一緒に五車町に戻ってきたり、『電遁乙女と酔いどれ剣士』で六穂のことならもう深月に聞いた方が手っ取り早いと周りに思われていたりと、二人がどんどん親密になっているかのような描写を、個々のイベントの本筋とは関係なく入れている。
 そういった積み重ねをしてきた上での、もうルームシェアくらいしてもおかしくないだろうという本作だ。
 二人で料理したり食事したりお喋りしたりといった、単なる日常描写をここまで細かく書くことは、普段のシナリオではなかなかできないので楽しい。
 そして今回は、その後の夜の日常も書くことにした。
 対魔忍RPGでエロシーンは山ほどやってきたが、調教とかではない女の子同士の行為はまだ書いてなかったので、せっかくだからこの二人でやりたかったのだ。
 二人とも手を後ろについての貝合わせのポーズから、身体を起こして両手を繋いで、最後は抱き合って絶頂という体位変化は、これが秘密の行為であるがゆえに、深月と六穂で形作られる淫花がその快感の高まりで開いていくのではなく、逆に閉じていくというのをイメージしている。