恋愛のゴールとエロゲのハッピーエンド

童貞をこじらせた以上はその克服のための困難は死ぬまで続く
 童貞というのは、ついつい交際に持ち込めた時点がゴールだと勘違いしがちです。そんな莫迦なはずがない。モテから見れば、交際開始がスタートですよ。でも童貞、とくに非モテはそれをゴールと思い込みやすい。

 エロゲは基本的にそこをゴールにしてるな。特に純愛物。
 なんだかんだあって告白し、間髪入れずにHシーンに突入。で、エピローグ。
 下手するとエピローグは結婚式だったりして、主人公は「ずっと君のことを愛し続けるよ」とか呑気なことを言っている。良くあるパターンだ。
 現実では、交際開始がスタートというのは全面的に同意するが、ファンタジーとしての恋愛を楽しむ上では、「ついに恋人になった」「Hできた」という達成感がピークになったところで物語を終えるのが無難なのだろうと思う。


 前々から、その先を書いてみたいという思いはある。
 恋人になって始めてわかる相手の嫌な面、逆にいままで出してこなかった自分の一面、付き合うのは楽しいことばかりではないこと、恋人だからこそ生じるお互いのわがままやすれ違い、隣の芝生はよく見え、他の男や女を利用した微妙なせめぎ合い、こんなことなら付き合わなきゃ良かった……とまあ、恋人になる前は想像もしなかった幾多のトラブルがあって、「でもやっぱり一緒にいたい」とさらに二人の仲が深まっていく、みたいな話。
 現実には、仲が深まらずに別れることも多いわけで……っていうか、どんな人も最後の一人以外とは結局別れている訳だし(見つからない場合もあるし)
 つまりだ、恋人になるまでの物語とはひと味違う、恋人になってからの物語、「恋人と付き合うのって楽しいことばかりじゃないけど、でもね」っていう、苦みと酸味をきかせた恋愛ファンタジー


 もっとも、ヒロインの嫌な面も書かなきゃいけないのが、エロゲ的には辛いかもしれない。
 例えば愚痴。
 バスケ部のキャプテンをやっている恋人がいたとして、もうすぐ大会なのに部員の誰がどうだ、彼がこうだとまるきり実感の掴めない話を延々聞かされ、反応がちょっとでも薄いと「ちっとも話聞いてない!」とキレられる。
 それならばと、真剣に話を聞き「こうしたらどう?」とアドバイスでもしようものなら、「わたしが悪いってこと? わたしのこと全然分かってない!」とまたキレられる。
 まあ、ヒロインの嫌な面というよりは、恋人同士のコミュニケーションの失敗で、現実にもありそうな状況だが、それを読んで萌える人はいないよなあ。

「ねぇねぇ、お正月に晴れ着を着た写真だよ」 「ふーん」 「ちゃんと見てよ?」 「うん、見たよ」 「……」

 普段から、会っても話題もなく、興味のないテレビ眺めて笑って、テレビが終わったら会話も途切れ、微妙な空気が流れて帰っていく。ひ、悲惨だ。熟年離婚を控えた年金生活夫婦のようです。

 そうそう、こんな気怠い感じも欲しいねえ。
 エロシーンでさえ、ちょっとやってみたくはある。
 恋人の気分は乗っているが、こっちの気分はいまいち。恋人はいつものように喘いでいて、その顔を恥毛ごしに眺めつつ、「何やってるんだろうなあ、俺」とか内心で溜息。ただ、一物はそれなりに勃っている――とか。
 萌え皆無だけどな。