「アニメがお仕事」第5巻 感想


アニメがお仕事! 5巻 (5)アニメがお仕事! 5巻 (5)
石田 敦子

少年画報社 2006-08-28
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今、一番気に入ってるシリーズかもしれない。
アニメ業界を舞台に、アニメーターの女の子が仕事や人間関係で、藻掻き、凹み、挫折寸前になって、それでも頑張っていくストーリー。作者は元アニメーターの石田敦子氏。
アニメとエロゲとで違いはあるが、主人公イチ乃がアニメーターとしての理想と、努力してもままならない実力の狭間で悩み、その理想すらも毎日の仕事の中でぼやけて行くところとか、制作に携わる者として分かりすぎるくらいによく分かる。


まだ下っ端なのに企画会議に参加し、自分より遙かに実力が上の人たちに囲まれて、端から見ればただはしゃいでいるだけなのに、本人は某かのことをやった気分になってるところとか、痛すぎて、覚えがありすぎてもう。
そこで、憧れのアニメーターに言われた台詞。
「同じ景色を見ている気にならないように。君は上手い人の横にいるだけで深く参加してる気になってるだけだよ」
あまりにキツすぎて、しばし本を閉じた。
その後、イチ乃は何をどうしたらいいか分からなくなって、ただ仕事を淡々と上げるだけになってしまう。
しかも、「不思議なことに何かをあきらめてから、リテイクはほとんど来なくなった」とか死んだ目で言ってる。
まあ、あるね。確かにあるね、そういうこと。


何かをあきらめろとは言わないが、この手の仕事――というか、どんな仕事でも思い入れがありすぎて空回りというのはよくある。
実際、シナリオでも、気合いを入れまくって書いた部分がスルーされ、淡々と書いた部分の評判が良かったりするのは普通だ。
個人的な感覚で言えば、構成や設定や文章表現なんかは思い入れよりは純粋に本人のテクニックという気がするし、逆に書いてるうちに出てくるイイ流れとか、キャラが立って勝手に走り出すあたりとかは思い入れの比率が大きいような気がする。
仕事として淡々とやっていても、思い入れは自然に入ってくるものだし(でなきゃ仕事にしてないよ)、むしろ自分では抑え気味にやっていた方が、テクニックと思い入れのバランスが取れていい結果になるのかもしれない。
大体、淡々とやってるつもりなのは本人だけというケースもままあるし。
社内勤めだった時、同僚の一人から「よく鼻歌うたいながらやってる」と言われたことがある。
鼻歌はないだろうと否定したら、まわり全員から「歌ってる」と突っ込まれた。ちなみに、そういう時は椅子の上で胡座をかいているそうだ。よく見てるよな。


マンガの方では、イチ乃は悩みに悩んだ末、「自分の仕事だと分かってもらえなくてもいい。自分の力を信じて微力でも力を尽くそう」というあたりで、立ち位置を取り戻したようだ。
それも長くは続かないんだろうなあ。
制作は浮き沈みの繰り返し。