「こういう時は女の喧嘩相手より男よ、男。頑張んなさい」

あまり重要でないシナリオをつらつらと仕上げる。
別に個人的に重要でないと思ってるわけではない。
今、他キャラで重要なストーリーが進行しているので、そのキャラは脇役にならざるを得ないようなシナリオということだ。


ゲームでは、場所とキャラを対応させていることがよくある。古すぎる例だが、Kanonでいうと校舎裏にいけば栞がいて、夜の学校いけば舞がいるといった風に。
今やってるゲームは、道中物――って書くと水戸黄門みたいだな、ロードムービーにしとくか――なので、それがより顕著になっている。
ずっと帰ってなかった故郷を訪れるとか、想い出の場所で偶然誰かと再会するとか、ずっと目指していた目的地にたどり着くとか。ありがちといえばありがちだが。
ありがちとはいえ、そこでは当然、その場所に対応したキャラが主役で、重要な話をイベント絵を出してやって、それで主人公との関係も大きく変化したりする。
なので、それ以外のキャラについては、あまり出しゃばらないように、それでいてそのキャラらしさが出るように仕上げることになる。
ラーメンのスープでたとえると、鰹節とか煮干しとか昆布とか、その辺の和風軍団に相当するだろうか。いないとなんか寂しいけど、基本は中華だからそれ忘れないでね、みたいな……ちょっと違うか? まあいい。


実際に書く上での注意といえば、あまりつっこんだ内容にしないということがあげられるだろうか。というか、つっこんで書きたくても大抵怖くてできない。


例えば、Aというキャラが昔の恋人に偶然会って喧嘩してるのを主人公が目撃する、という事件があったとする。
その場合、B,Cのキャラのシナリオでもその話に触れないわけにいかない。それで、B,Cの主人公に対する気持ちも出すことができるわけだし。
当然、知っておきたいのは喧嘩の詳細だ。シナリオが上がってれば問題ない。
しかし、大抵はまだ上がってないか、同時進行で誰かがやっているか、でなきゃそのうち自分が書く予定になっているかで、資料はプロットしかないことがよくある。
このプロットってのが、結構あてにならないんだよなあ。
その通りに書きたいのは山々だ、てか書くべきなんだろう。
でも、実際にシナリオを書いたときの流れってものがあるから、プロットに「不注意な一言がきっかけで喧嘩」とかあっても、出来上がってみたら「最初からギスギスしていた」とかありがち。そして、そっちの方が良い。良いんだからしょうがない。


なので、当事者以外のシナリオでは、必ず起こるであろう「喧嘩」という事件だけを元に、話を作っておくのが安全ということになる。

「あの二人、あんなことになるなんてな」
「しょうがないよ。わたしでもああなっちゃうかもしれない」
「そうなんだ?」
「だって女の子なんだよ。あれは酷いよ」
「うん、ちょっとな」

とか書きつつ、書いてる本人が一番分かってなかったりするのは、結構スリリングだ。
これもシナリオライターの醍醐味……かもしれない。