久しぶりに読もうと思ったら、なくなっているのに気づいた。
四つある本棚を全部ひっくり返してみたが見つからない。
確か、最後に読んだ後、机の横に積んでおいたような気がする。
それから見た記憶がないので、そこから崩れ落ちて、すぐ横のゴミ箱に転落していったのだろう。
しょうがないのでまた買った。無駄遣いだな。
で、久しぶりに読み返したが、しみじみキツイ話だ。
最初の頃は、未熟なアニメーターが業界内でどう自分の立ち位置を見つけていくかがテーマだったが、物語が進むにつれ、アニメーター同士での恋愛の難しさにテーマがシフトしていっている。
その痛々しさは、読んでいて思わずページを閉じたくなるほど。
三角関係とも四角関係とも言い難いのだが、関係人物は4人。
ヒロインのイチ乃(女)
イチ乃の(一応の)恋人である志村(男)
志村とコンビを組んでいたが、今はぎくしゃくしている掘内(男)
そのぎくしゃくの原因であり、志村と付き合っていたが分かれ、今は掘内と一緒に仕事をしている星(女)
四人のうち、イチ乃だけがアニメーターとして圧倒的に劣っているところがミソだ。
イチ乃は、女としてアニメーターとして、掘内に憧憬とも恋愛感情ともとれる感情を抱いているが、その感情は劣等感と表裏一体のもので、近づくたび自分が駄目なことを思い知らされている。
掘内は、そのイチ乃に何かと目をかけてやっていて、星とも仕事の仲間として上手くやっているが、それ以前にアニメーター同士で恋愛感情を抱くのを恐れている節がある。
その理由は、かつてイチ乃と同じく、自分より劣ったアニメーターと付き合っていて、アニメーターであるが故にその娘をつぶしてしまった過去があるため。
志村は、自分から言い出してイチ乃と付き合うようになったが、それはイチ乃に目をかけている掘内に、恋人であった星を取られたことへの意趣返しから始まったような印象がある。
次第に、イチ乃のことを本当に好きになっているような描写も見受けられるが、それも自己欺瞞のようにも思える。
一つ言えることは、志村はイチ乃を通して掘内、星を見て、イチ乃は志村を通して掘内を見ている。しかも、お互いそれに気づいている。イチ乃曰く「恋人もどき」
さて、残った星は、掘内、志村と二人の男に好かれている割に、いまいち出番が少なくて、出てくる時も仕事のできる女という描写が多いので、その感情の深いところがまだあまり見えてこない。
とはいえ、かなり鬱屈しているものがあるようで、掘内に言い放ったこのセリフはグサリと来た。
「だから実力が同じそうな私がいるの? バカにされたもんねぇ。
それじゃ同じくらい上手いってくくりの中から二人共出られないのよ。
もう私達お互い上手くなれないってこと。
どちらかが少しでも先に行けば壊れるじゃない。こんな関係。
恋人になって分かれた方がまだましよ。
じゃあ聞くわよ。
あなた私が上だったらどう?
それを許せる?」
掘内は答えられず、それが答えになってしまっている
そんな自分の小ささを誤魔化そうと強引にキスしようとするも、二人の後ろにはイチ乃がいたという。
いやあ、キツいわ。
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