『雷神の対魔忍』はついに登場の大人ゆきかぜが主役となるイベントだ。
その元ネタは葵渚氏がTwitterで公開したこのラフだ。
トレードマークのツーテールをばっさり切っていることといい、なんという冷たい目をしているんだ、この世の地獄をすべて見てきたような目といい、あれこれ想像を逞しくするにあまりある素晴らしい一枚だ。
私も以前、このゆきかぜで話を作るとしたらという妄想を書き連ねてみたりしていたので、イベント担当になってとても嬉しい。
そんな思い入れもある上、ストーリー自体が私の好きな王道話なので語り出すと止まらなくなってしまう。
というわけで、どのへんを特に重視して書いていったかを中心に語っていきたい。
まずは大人ゆきかぜのクールな強さだ。
強い。絶対に強い。
ライトニングシューターがもはや必要ない*1なんてのは序の口で、レーザーみたいな雷撃をぶっ放すわ、雷の剣で逸刀流を使いこなすわと、未来のアドバンテージがあるとはいえ、今のアスカを手玉に取っている。
どれくらい強いかというと、覚醒アサギはどうだか分からないが、現在のノーマルアサギよりは強いくらいのつもりで書いている。
手元の資料には、葵渚氏による技のラフデザインもあり、こっちはこっちで例えるなら多くの女たちの哀しみを背負った夢想転生状態というか、そりゃもう痺れるほどカッコいい。
そしてカッコいいだけでなく、その繰り出す技を会得するに至った過去(未来だが)をあれこれ想像させる代物になっている。
なぜ逸刀流を使えるのかとか、アスカ以外の対魔忍はどうなったのかとか色々書きたくなってしまう。シナリオでもそれを匂わすようなセリフを散りばめてみた。
大人ゆきかぜの積もり積もったふうま君への想いも重視したところだ。
最初は思わず抱きついたりしてるが、その後は感情をひた隠しにしてクールな未来戦士として振る舞い、だけど最後にはかつての熱い想いを取り戻して大勝利、そして別れのキス。
いやもう王道すぎて本当に書きがいがあった。
「さあ行くんだ、その顔をあげて」てなもんだ。いいよね、ああいう別れのシーン。
今までのエピソードから「私はふうまの銃」というとっておきのセリフも使えたし、お正月イベントで実は写真を撮っていたという話も追加できた。私は運良く元のシナリオを両方とも担当しているので感慨もひとしおだ。
写真の回想シーンではふうま君の姿がないと間が抜けてしまうので、去年のお正月の時点ではなかったふうま君の立ち絵があってよかった。
古びた写真だけを残していくというのは、やはり悲惨な未来からのタイムトラベル物の基本『ターミネーター』へのオマージュといったところだ。
そして、大人ゆきかぜの心情に関連して、彼女にとっての過去のエピソード、つまり鹿之助やふうま君が殺されてしまう場面や、未来から出発する場面なんかを断片的に書いている。
そういう過去があったのは最初から決まっていたが、それをどう表現するかは指定されていなかったので、アルサールに会った瞬間に想起した大人ゆきかぜの回想風にしてみた。
大人ゆきかぜの視点になってるところがミソで、彼女がふうま君にはあえて語らないことをプレイヤーだけには伝えている。
そうすることで、大人ゆきかぜの気持ちに寄り添ってもらうのが狙いだ。回想ってのはこういう風に使いたい。
とはいえ、冷たくなっているふうま君を前にしたゆきかぜ、さくら、蛇子のセリフを考えるのは結構辛かった。それぞれたった一言だけなのに書いててちょっと凹んだ。
一方、訳もわからず鹿之助が最期に口にするのが、ふうま君と姉ちゃん(上原燐)というのは、私の中からごく自然に出てきた。姉ちゃんはいいとして、ふうま君のほうは別にBL展開とかではない。なんとなくだ。
ところで、未来で大人ゆきかぜと話しているアスカの姿が出てこない。なぜか?
絵がないからという身も蓋もない理由はおいておいて、ここはあえて姿を出さなかった、姿を出せない理由があったと思いたい。
例えば、すでに対魔粒子コンピュータ内だけに存在する人格*2だとか、ちょうどスーパー改造中で動けないとか、なにか大人ゆきかぜとは一緒に行けない理由があるのを匂わせるつもりで、アスカのセリフは普通の「 」ではなく、『 』を使っている。
もっとも、もし未来編をやることになったら、アスカにもちゃんと出てきて欲しい。そのときの整合性? 知らん。
未来アスカについても葵渚氏が色々とツイートしている。魔族、ロリ、 ロボその他、どれも書き甲斐がある。個人的には魔族化がいい。
一緒に行けないといえば、クリアも東京キングダムに行くのを大人ゆきかぜに止められている。
最初はふうま君を呼んでくるだけだったが、あの流れで留守番というのはあり得ない。絶対に行きたがるはずだ。
行かないなら行かないだけの理由が必要だろう。そのへんを考えてドラマを盛り上げるのがシナリオの醍醐味でもある。
というわけで、大人ゆきかぜに母性全開で止めてもらった。
アニメなら、クリアを抱きしめている大人ゆきかぜを出崎統ばりのハーモニー処理でビシッと決めたい場面だ。
ここらへんの会話で、大人ゆきかぜがジュノを懐かしがっているが、別にジュノまでアルサールに殺されたとかではない。
神様のジュノは、良くも悪くも覚えている人間のふうま君が死んでしまったので、わざわざ出てこなくなっただけだ。婚姻の誓いどころじゃないしね、未来。
そういう神様がらみのドタバタも起こらなくなり、今思えばあれはあれで楽しかったなといった気持ちで、大人ゆきかぜは「懐かしいな」と言っている。
さて、大人ゆきかぜの洗練された強さを見せつつ、実はいきなり死ぬことになっていた鹿之助のピンチを救って、三人で東京キングダムに行くことになる。
まずは、ふうま君と大人ゆきかぜのトークタイムだ。
未来のことを話させようとするふうま君に対して、大人ゆきかぜは素っ気ない。
一緒に東京キングダムに来たのが実は初めてであること、今と未来の街の変わりようなど、ふうま君は色々と水を向けるのだが、あいまいな返事しかしてくれない。
その会話も、年齢のこととか聞いたせいでいきなり終わってしまう。
SF的にどれだけ未来かはとても重要なので、ふうま君の気持ちはよく分かるが、「いまいくつなの?」とか聞いて答えてくれるわけがない。
しかし、実はいい線をついていた。
ふうま君は「なんにも話す気がなさそうだな」とか言っているが、違う。
懐かしい馬鹿話に胸がいっぱいになり、つい話してしまいそうになって離れたのだ。
だから直前でむっふーー顔をしている。そこに気づかないとは、つくづく鈍感な男だ。
そして休憩タイムになると、大人ゆきかぜは自分からとっとと消えてしまう。ふうま君と話すと決意が鈍りそうでヤバいからだ。
ほったらかしにされた二人のおやつのくだりは、シナリオのときにアドリブで追加した。
鹿之助がゆきかぜに疑念を抱いていて、ふうま君がその迷いを解くというやりとりはプロットのままだが、書いていてセリフだけでなく何か具体的なアクションが欲しくなった。
それが隠れてしまったゆきかぜにおやつを分け与えるという行動だ。同じ釜の飯を食った仲間というあれだ。
これまで任務中のおやつシーンなどやっていなかったが、逆にやってないのをいいことに、実は裏でおやつを食べてましたということにしている。忍者なんだから行動食くらい持ってるだろう。
ゆきかぜが甘納豆を好きという元ネタは、新田次郎の山岳小説『孤高の人』だ。
そのモデルにもなっている登山家、加藤文太郎が行動食としてやたらと甘納豆を食べている。
ゆきかぜはああ見えていいとこのお嬢さんなので、スーパーで売ってるような安い甘納豆でなくて、『銀座鈴屋』あたりの高い甘納豆を食べているに違いない。
私もたまにしか買わないが好きだ。上品でいてしっかりとした甘さもさることながら、彩りも綺麗で楽しいので贈り物としておすすめだ。
今回のメンバーにいないので書いていないが、さくらは輸入食材店で見たことのない変なお菓子を買ってきて、そのつど当たりだの外れだの大騒ぎしている気がする。
蛇子はバレンタインの一件でも分かるように、味覚がちょっと変わっているようなので、練乳チューブを直にチューチュー啜っていたりすると面白い。
きらら先輩はふうまのためにクッキーを作ってみたりするが、色々考えすぎてまだ一度も持っていけていないとかがよく似合う。
アスカはサイボーグ専用のとてもまずい固形食糧とかを持っていそうだ。そしてふうま君に味見させて喜んでいる。
おやつのあとは米連の秘密基地に突入だ。
ここで大人ゆきかぜがアスカ、仮面の対魔忍と連戦することになる。
あそこのバトル描写にはちょっと気を使った。
大人ゆきがぜが圧倒的に強いのは大前提として、その上で他の二人があまり弱く見えないようにしている。
そこで、強さの形にも色々あり、
戦闘力の数値なら、大人ゆきかぜ、アスカ、仮面の対魔忍の順。
パワーやスピードといった基本スペックなら、アスカ、大人ゆきかぜ、仮面の対魔忍の順。
戦いの年季なら、仮面の対魔忍、大人ゆきがぜ、アスカの順。
といったイメージで戦闘シーンを組み立てている。
大人ゆきかぜが仮面の対魔忍に使って避けられた『浦波』は、凜子先輩が主役のイベント『奪われた石切兼光』で、逸刀流の剣士が使っていた技だ。
今回は名前だけであまり細かく描写していないが、要するに忍法を併用した佐々木小次郎の燕返しだ。「とりあえずぶっ放せ」のゆきかぜがこんな技を使うようになるとは感慨深い。
アスカは戦闘用の立ち絵が色々あるし、仮面の対魔忍の空蝉はドローンで表現できる。
そして、大人ゆきかぜが使う完璧超人の最大の秘密兵器サンダーサーベルときて、画面の見た目もスペシャル回に相応しいものになったと思う。
その後は、いよいよ新生アルサールの登場だ。
さっきの強さの分類で言ったら、こいつは基本スペックだけが異常に突出していることになる。
そして、ただそれだけの人類を舐めているバカなので、バトルの展開はあえて単純なものにし、ふうま君の策略にまんまと引っ掛かってやられている。
その前座となるパズズ軍団も新規デザインであるにも関わらず、大人ゆきかぜと鹿之助のコンピプレイで瞬殺するという贅沢な使い方だ。
ここの見せ場は、大人ゆきかぜが『ふうまの銃』であったことを思い出し、懐かしいハンドサインに歓喜して、アスカとダブルで大技をぶちかますところなのでそれでよい。
『ターミネーター2』のように凍らされたアルサールが、「貴様たちはなんなんだ!」と、今度は『プレデター』のように絶叫するのに対し、ふうま君が「俺たちは対魔忍だ」と答えるところなどは書いていて楽しかった。
最近、感度3000倍のネットミームみたいになってきている対魔忍だが、そういうワードをここぞという場面で使うのは気持ちがいい。
蛇子が言うところの「ふうまちゃんって、たまにカッコいいこと言うよね」というやつだ。
そして、キスからのお別れ。
最初にも書いたように、大人ゆきかぜは色々な想いをふっきって帰っていく。
目の前でキスを見せつけられ、鈍感男子二人にその心情を説明する羽目になって、今回もアスカごめんという感じではある。いつか埋め合わせをしてあげたい。
イベントはそこで終わっているが、翌日すぐまた現れて、
「ふうま、一緒に来て欲しいの!」
「どこへ?」
「未来へよ!」
てな感じで、稲妻と共に二人が消えていくという『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なオチはやっぱり考えた。
それをやると、To Be Continuedになってしまうので自重したが。
今後、ふうま君が未来に行くかどうかはさておき、ダイジェストですませていた未来の過去話はちゃんとやりたいところだ。
今回、プレイして思い出した方も多いだろうが、ドラゴンボールのTVスペシャル『絶望への反抗!!残された超戦士・悟飯とトランクス』みたいな形がいい。期待している。
さて、五車祭でいよいよ大人ゆきかぜが実装されることになった。
そのエロシナリオも私が書いている。
笹山氏がツイートしている通り、イベントの後日談だ。
このイベントをやっておいて、後日談が書けないのはやはり寂しいので、担当できてとても良かった。
そして、ユニットの戦闘アクションで、イベントでは絵なしだったトールハンマー・ネイキッドの真の姿が明かされるはずだ。
実はイベントで披露したのはトドメの一撃で、幕の内一歩のデンプシー・ロールがそれ単体ではなく、リバーブロー、ガゼルパンチのコンビネーションから繰り出されることで完成するように、トールハンマー・ネイキッドもその前段階となる技があって、それは冒頭でも述べた大人ゆきかぜの過去を想起させるものになっていると思う。
いつものことだがとても期待している。
後はガチャで当てるだけだ。
では、今回はこのへんで。